「メタバース」が新たなビジネスフィールドに

「メタバース」―最近よく耳にする言葉ですが、インターネット交流サイト最大手のフェイスブックが「メタバース」事業に軸足を移すことを明確にするため、社名を『メタ』(メタ・プラットフォーム)に変更すると発表したことから、一気に注目が集まりました。SNS運営への批判や成長鈍化への懸念も漂う中、ザッカーバーグCEOは「今後数年で『メタバース企業』と認識されるようになる」と語っています。同社はすでに今年8月、『Horizon Workroom(ホライゾン・ワークルーム)』という独自の「メタバース」展開をスタートしています。今後2年間で「メタバース」の構築に5,000万ドルを投じるほか、5年間でEU域内において高度IT人材を1万人採用する計画も発表しています。

さて、ここで改めてにはなりますが「メタバース」とは一体何なのでしょう。例えば、想像しやすいところで言えば、米エピックゲームスが手掛ける『フォートナイト』がその代表例と言われています。2017年にリリースされた対戦型オンラインゲームで、累計登録者数が世界数億人に上りますが、ゲーム以外にも有名ミュージシャンのライブを見たり、映画を見ることもできます。その他のイメージとしては国内で今年ヒットした細田守監督の劇場版アニメ『竜とそばかすの姫』や2009年公開の『サマーウォーズ』、昨年巣ごもりで大ヒットとなった任天堂のゲーム『あつまれ どうぶつの森』などを思い浮かべるといいかもしれません。

ネット上に構築された3DCGの仮想空間で繰り広げられるもう一つの世界で、現実世界と同じように様々な活動ができます。そこでは利用者がアバターとなって活動し、ブロックチェーン技術を用いたNFTと呼ばれる非代替性トークンを使って、土地や商品(アイテム)の売買などを行うことが出来るものもあります。また、現実世界にあるファッションブランドや自動車メーカーなどが「メタバース」に出店していることもあります。「メタバース」には国境も性別も関係ないので、物価や政治などにもとらわれず、世界中のユーザーが自由に交流したり活動したりすることが出来ます。さらに、VR会議などゴーグル端末を使って、いかにも対面で会っているかのような会議も実現可能となります。

NY市場ではこのところエヌビディアマイクロソフトの上昇が目立っていますが、サービス提供を行う企業よりもインフラ構築企業が有利と言われていることが背景にあります。国内企業ではグリー(3632)が3Dキャラクターのアバターを通じて、交流や商取引が出来る「メタバース」事業に参入するとして、今後2~3年で100億円規模の投資を行うとしています。世界の利用者数は数億人を目指しているとのこと。また、GFA(8783)も同社グループが展開する「CLUB CAMELOT」においてメタバース事業を展開すると発表しています。実空間の事業と合わせて、仮想空間においても空間プロデュース事業を拡大していくとしています。その他、シーズメン(3063)はメタバースファッション専門アパレルブランド『ポリゴンテーラーファブリック』を新設して、メタバースファッション事業に進出。シャノン(3976)は子会社が3DCGでバーチャル展示会を体験できるメタバース型バーチャルイベントサービス『ZIKU』の提供を11月から開始しています。 実は関係がなさそうな日産自動車(7201)もメタバース上にバーチャルギャラリー『ニッサンクロッシング』を開設し、新車発表会やバーチャルツアーなど実施する考えです。旧フェイスブックこと『メタ』は、「メタバース」構築に取り組む中で、個人情報の保護や安全など4分野の研究者と連携して、仮想空間でユーザーが安心して活動できる環境を用意する計画だとしています。当然ながら、現実世界と同様に一定のルールが必要ですし、世界中の人が繋がるということを考えれば、ユーザーの良識的なマナーも求められると見られます。今後、様々な「メタバース」が誕生してくると見られますが、ビジネスやイベントでの交流手段として、安全・安心に利用できるようになれば、新たなビジネスモデルやマーケットが創造され、よりボーダレスな展開を導いてくれることも期待されます。投資家としては、今後の動向から目が離せません。


(カイカ証券)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。