「恐怖指数」を「買い場指数」にする

 先月の寄稿において、ダウの1,000ドル単位の大台替えスピードが過去にないくらい速いことを述べたが、今回の米国発の株式市場の調整は、この急ピッチな上昇と、同じく昨年12月の寄稿で述べた、これまで続いてきた、低すぎるボラティリティ相場の「2つの反動」と考えている。

 まず、前者の「急ピッチ」であるが、今回、私が自身のメールマガジンにおいて“警鐘”を鳴らしたのが、米国ダウが今年に入ってから実に11回目、結果的にこれまでのところ最後に市場最高値を更新した1月26日のことであった。

 私が、相場の過熱感を測る際に、最も重要視している指標は、「25日移動平均乖離率」と「RSI14日」という一見するとオーソドックスなものであるが、これを加工して用いている。
 下のグラフは、この(14日間の前日比値動きのうち、上昇の割合を示す)「RSI14日」の直近5日間の平均と10日間の平均を足したものとダウの推移である。このグラフは、「売り」、「買い」のうち、基本的に「買い場」を示唆するサインであり、テクニカル・サインとしては、引いている補助線の80%を割り込み、反発するタイミングが「買い場」であることを示している。
 しかし、このグラフで、赤い楕円で囲った部分が今回を含めて2010年以降4回あるが、これは、その数値が180%を超えたところであり、過熱感がピークを迎えたことを表している。そして、これまでは、その後、指数はピークアウトし、日柄調整局面を迎えている。赤楕円の右側の緑で囲った部分は、その日柄期間を示している。
 述べたいことは、今回、今年に入り、それまでの10回の市場最高値更新では出なかったサイン(180%超)が、この1月26日に示現したということである。
 1つ明るいことを述べる。この数値であるが、これまで一方方向の下落となっていたが、先週金曜日(2月16日)に69.62%と前日の数値68.31%から僅かに上昇している。この底打ち、再浮上とともに指数は今後再上昇することが期待される。

 続いて、「低すぎるボラティリティ相場の反動」について述べる。
 市場関連の報道で米国の“恐怖指数”こと「VIX」については、完全に市民権を得た印象がある。これを世に紹介した頃は、毎回、注釈を述べていたが、もうその必要はないであろう。

 このVIXであるが、単にここ数ヶ月の裸の数値をグラフにして解説していることが多いが、あまり意味のないことだと思っている。VIXが表していることが“恐怖=市場の不安心理”という“揺れ”である以上、直近の数値に対する「相対的な見方」をしなくては意味がない。VIXの年間平均値は、2015年から昨年までの3年間でも、16.7%、15.8%、11.1%と変化している。同じ、「VIX25%」でも、2015年と現在では、その“揺れ具合”は明らかに違うのだ。

 そのため、これについても加工を行っている。直近5日間のVIX合計値を直近25日のVIX合計値で割り、もし、全ての値が同じであればこれが20%となることから、この数値に30%を足して、平均が50%程度となる数字を作り(A)、これを100%から引くのである(B)。このようにすることによって、直近における相対的な位置を測るとともに、中心を50%として、上下のレンジ内で動く指数へと変換させている。これを「井上VIX可視化指数5日」と呼んでいるが、同様に10日間の合計値を25日間の合計値で割り、10%を足す(その後、これを100%から引く)「井上VIX可視化指数10日」を算出し、この2つを足したものとダウの動きを示したものが下のグラフである。
 なぜ、最後に100%から引くかというと、下にあるときが「買い場」と視覚的に示すためであり、これにより「恐怖指数」は「買い場指数」となる。

 このグラフにより、今回の“揺れ”が、2015年夏の上海ショックや、翌年の英国BREXIT騒動の時よりも遥かに大きかったことが分かる。そして、この数値であるが、2月9日に61.1%で底打ちし、先週金曜日の2月16日時点では77.2%にまで上昇している。この底打ちが先週の米国市場の連日高に結びついたのかもしれない。

 それでは、これから一方方向で米国株式市場は上昇するのかというと、そうとは言えないことを示す指標を最後に紹介しておく。それは、ダウの「日中高値―日中安値」を前日終値で割った「値幅率」である。この値幅率が1%を超えたのが、昨年は1年間で11回しかなかったのであるが、今年は先週金曜日時点で、既に16回も起きている。
 但し、紹介したいのはこの単純な値幅率ではなく、この値幅率の5日平均が2月9日に4%を超えたということである。これを日経平均2万2,000円で例えてみると、5日間、連日でザラ場の値幅が880円もあったということである。

 この「ダウの値幅率5日平均4%超」であるが、実は、リーマンショックの影響が薄れた後は、2011年8月の「米国債格下げ時」と前述の「上海ショック時」の2回しか出ておらず、いずれも、値幅率1%超の動きが続いた後に1か月以上経ってから、“明確な”日柄調整期間抜けを示しているのである。
 そのため、日柄調整期間を脱するのにはまだ時間がかかることは覚悟しなくてはならないが、今回の下落の要因であった「2つの反動」については、上記のとおり“本震”は脱したと考えている。

(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。

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