『みちびき』に導かれ

10月26日、鹿児島・種子島宇宙センターから、H2Aロケット44号機で打ち上げられた測位衛星『みちびき』は、日本版全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)の実現を目指して開発され、2010年に初号機が打ち上げられました。2018年には2号機から4号機まで、3機が追加で打ち上げられ、現在は4機体制で運用されています。今回は初号機が設計寿命を超えたため、その後継機として打ち上げられた格好です。

現在、衛星測位システムを整備、運用している国・地域は米国(GPS) 、ロシア(GLONASS)、欧州(Galileo)、中国(BeiDou)、インド(NavIC)と日本(QZSS:Quasi-Zenith Satellite System:準天頂衛星システム)の6つで、2021年1月現在で米国31機、ロシア27機、欧州24機、中国45機、インド7機、日本4機の計138機が運用されています。このうち、米ロ欧のすべてと中国の一部の衛星は地球全体をカバーする中高度軌道を周回しています。一方、中国の一部衛星とインド、日本の衛星は対象地域を重点的に周回する軌道(ISGO)を描く準天頂衛星と、赤道上の軌道で地球の自転と同じ動きをする(地上からは止まっているように見える)静止軌道(GEO)の衛星の2種類がエリアをカバーしています。

そもそも、衛星測位とは衛星からの信号を受信することによって、地上の位置や時刻を特定する技術のことで、3次元情報と時刻情報の4つのパラメーターを計算するため、最低4機の衛星からの信号を受信しなければなりません。また、衛星からの信号は、地球を取り巻く電離層でゆがめられることがあるので、それを補正する必要があるほか、ビルや山の陰で信号が届かないケースをなくすために、複数の衛星の信号を受信して、正確な位置を計算する必要があります。そのため『みちびき』は米国のGPS衛星との互換性を持つことで測位精度を高めています。今後は持続測位が可能となる7機体制を確立するために、2023年度をめどに追加3機の開発を進めて運用を始めるとともに、他国の測位衛星が使用できない場合も自国の衛星だけで運用がカバーできるようにすることを目指しています。現在は5~10メートルの測位精度も、7機体制になれば、数センチメートルまで精度を上げることが出来るようになるといわれています。

すでに、カーナビやスマホ、電波時計など身近なところで衛星測位サービスが利用されていますが、今回の新型コロナの緊急事態宣言下での人出の情報などは、定点カメラなどの他、こうしたスマホの位置情報も活用されたとみられます。今後、より精度の高い測位情報を得ることが出来るようになれば、高齢化で労働力不足が深刻化している農業分野における複数の無人農機の遠隔監視走行や、自動車の自動運転で利用される三次元地図のほか、視認性が低下する荒天時(濃霧や降雪など)のインフラ型走行技術などにも役立つとされています。地上だけでなく、ドローンなどの運行においても、一定の空域内に多数の飛行経路を設定し、複数のドローンによる高密度運行も可能になるといわれています。さらに、災害時にもユーザーのいる地域の災害情報や避難情報の提供、避難場所への安全な誘導、安否確認情報サービス(『Q-ANPI』)などに活用されます。 AIの高度化やビッグデータの活用によって新しい社会を創造する「Society5.0」の実現に向けて、重要なインフラとなる高精度測位システムは、様々な産業分野で利用され、関連製品や周辺部材の需要も拡大が続くとみられます。衛星からの信号を受信するアンテナやモジュール(ソニー(6758)等)、端末(アップル(AAPL)等)などのほか、自動運転での高精度測位ユニット(パナソニック(6752)等)や周辺センシング技術製品(ミリ波レーダー、監視カメラ)などが注目されるでしょう。時間がある時に、周辺知識と関連銘柄をおさえておくと良いかもしれません。


(カイカ証券)

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