6月22日、第26回参議院議員選挙が公示されました(投開票日は7月10日)。参議院議員の任期は6年で、3年毎に定員の半数が改選されます。前回の2019年の参院選、つまり現状では定数が3増えて245議席になっており、今回2022年の選挙でもさらに3増えて、248議席となります。248議席の内訳は、選挙区が148、比例が100となります。今回はこの半分に当たる124議席(選挙区74、比例50)に加え、欠員1議席が加わることになります(補充議席の任期は3年)。
各政党の公約は様々ありますが、主要な争点は絞られそうです。まず第1に「物価高騰対策」です。新型コロナによるサプライチェーンの混乱に加え、ロシアのウクライナ侵攻による資源・農産物価格の高騰、それに伴う企業の価格転嫁が消費者物価の急上昇につながっています。さらに円安が追い打ちをかける形で輸入物価が一段と上昇し、国民生活に深刻な影響を及ぼしています。野党は消費税の税率引き下げや廃止による可処分所得増加を掲げて、生活支援を訴える一方、与党側は社会保障の財源となる消費税の減税には否定的で、補助金や助成金による物価高騰の抑制策に加え、「人への投資」を強化し、最低賃金の上昇を目指すとしています。ただ、客観的に賃金の引き上げに関して与党側の具体的な策は乏しい印象であり、岸田政権が既に打ち出している賃上げ促進税制などについても、構造上効果が上がるとの期待は聞かれません。この点に関しては、選挙の結果とは関係なく、減税以上に効果を挙げることが見込まれる、大胆な方策を指し示す必要がありそうです。
第2は「外交・安全保障」です。今なお続くロシアのウクライナへの軍事侵攻や北朝鮮の相次ぐミサイル発射などで、日本の防衛力強化も大きな争点となりそうです。さすがにウクライナの惨状を踏まえて防衛力の強化自体には前向きな党が多いようですが、方向性は分かれているようです。
そして、憲法改正については9条をめぐる扱いを中心に党の特徴を出そうとしています。改憲に前向きとされる勢力(自民、公明、維新、国民民主)の中でも、特に自民や維新はより積極的な方針を掲げています。また、9条以外に緊急時の議員任期延長なども論点となりそうです。
選挙前の議席数及び各党の議席獲得目標は図表の通りです。与党(自公)は参院全体での過半数となる125議席の獲得を目指します。非改選議席が69ですから自・公で今回56議席を獲得することが必要です。自民での単独過半数となると、70議席が必要となりますが、そうなれば、岸田首相の長期政権実現の可能性が一気に高まり、政策の一貫性が保たれることになるでしょう。一方、野党全体では63議席の獲得を目指しているとされ、野党各党は当然ながら選挙前の議席以上を獲得することを目標としています。ただし、今回の選挙は野党候補の一本化が非常に少ないため、票数の分散がどのような結末をもたらすのか注目されます。
また、憲法改正の国会発議は衆参ともに3分の2の議席が必要という観点で見ると、改憲に前向きな勢力(自民、公明、維新、国民民主)で166議席が必要となるため、今回の選挙では合計83議席以上の獲得が必要になります。28日時点の報道では、改憲勢力はこのラインを達成すると見られています。
現状では政党支持率では与党が4割以上を維持しているとみられますし、内閣支持率もおおむね安定して5割程度をキープしているとみられます。恐らく与党には野党の候補者分散も有利に働く可能性が高いでしょう。選挙結果には非常に注目していますが、まずは所得を引き上げる政策と消費の活性化を促進する大胆な政策を優先して、日本版スタグフレーションからの脱却を早期に実現することを為政者には期待したいものです。
(カイカ証券)
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