『台風シーズンに備えて』

 9月1日は『防災の日』、その日を含む1週間は『防災週間』でした。今年は関東大震災から100年に当たるため、8月29日から9月4日まで『在京民放NHK6局防災プロジェクト#いのちともに守る』のタイトルで、防災をテーマに、放送・配信・イベントなどで局を横断したコラボレーションが展開されました。首都直下型地震など大地震への備えを訴えるとともに、自分や大切な人の命を災害からどのように守るのかを発信しました。また、9月1日は「二百十日」でもあります。立春から数えて、二百十日から二百二十日の間は稲穂が実り、農家にとっては収穫に向け最も重要な時期ですが、同時に台風の襲来も多く、農作物への被害が心配される時期でもあります。今年は台風ばかりでなく、偏西風の蛇行によって、梅雨明け以降も前線による集中豪雨が災害を引き起こしました。8月上旬には東北から北陸にかけての日本海側で、線状降水帯が発生し、山形県や新潟県には大雨の特別警報が発令され、河川の氾濫や土砂崩れなどの被害が相次いだことは記憶に新しいでしょう。

 気象予報精度は年々向上し、集中豪雨や竜巻などの発生確度、河川の氾濫や土砂災害などの危険度を、以前よりも地域や時間を細分化し、提供できるようになってきました。観測機器の高性能化やスーパーコンピュータによるデータ解析技術の向上、さらにAIを使った高度な予測技術などが寄与しているとみられます。台風の勢力や進路予想、予想される最大風速などのデータは数日先までかなり高い精度で提供されるようになり、防災への準備も早い段階で可能となってきました。また、身近な局地気象の予測においても、位置情報と連携して、何時何分頃から、どのくらいの雨が、何時頃まで降るといった予想を、ウェザーニュースやヤフーニュースを利用して、スマホで簡単に見ることができるようになりました。

 近年ではさらに進んだ気象解析技術が研究されています。それが、『ミュオグラフィ』といわれるものです。宇宙由来の素粒子(ミューオン)を利用した可視化技術で、超新星爆発などで加速した素粒子が地球の大気中の原子核と衝突して生まれるもので、岩盤を数キロメートルも突き抜ける力を持っています。この「ミューオン」を使って、レントゲン写真のように、火山やピラミッド、原子力発電所などを透視して撮影することに成功しています。この『ミュオグラフィ』による火山の噴火予知や海洋気象分野など、気象予測分野への応用が期待されています。現在、東京大学とNECが中心となって、東京湾の海底下で、素粒子を測定する実験を行っています。アクアラインのトンネルの中に、約1キロにわたって、センサーモジュールを設置し、素粒子を検出することで、海上の波の状況や海底の構造などをモニタリングできるといいます。地震による津波や台風などによる高潮、高波を検知して、迅速な対応や防災計画に生かすことを目指しています。

 災害に備えるには今も昔もそれぞれの状況判断が重要となりますが、それを判断するうえで災害の種類や危険度をわかりやすく伝えることができるかどうかがカギを握ります。防災アプリなどを利用することによって、自分の住む地域だけでなく、故郷を登録しておけば、その地域の情報も得ることができるようになりました。自分を守り、大切な人も守ることができる仕組みを利用することで、被害を最小限にとどめることが、可能になりつつあります。さて、足元で被害が懸念されている台風11号ですが、こちらが過ぎたあとも台風のたまご(熱帯擾乱)が次々と発生する可能性を指摘する声もあり、台風シーズンはまだ続くとみられます。当然起きて欲しくはないものの、水害、防災関連の銘柄には短期的な物色局面が何度か来ることも十分想定されますので、値動きに注目しておくと良いかもしれません。

(カイカ証券)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。