『安倍後の株式市場』現時点で考えられること

安倍辞任一報下落後の『下げ渋り』が重要

8月28日(金)後場の取引中に「安倍首相 今夕辞任表明」の一報が伝わると、日経平均は前日比約100円高から同約600円安まで急落した。投資家はまずネガティブ反応を見せたものの、大引けでは326円安(22,822円)まで下げ渋った。現時点で多くの投資家は急落したことよりも、すぐに下げ渋ったことを重要視しているだろう。なぜなら、それは「織り込み済み」と捉えられるからだ。7年8カ月の長きにわたり政権の座にあり、「アベノミクス」という経済政策を実施し在任期間に日経平均を約4倍まで引き上げた大宰相の突然の辞任表明が、まず嫌気されることは想像に難くない、しかし、嫌気売りが長期間に渡るのか、短期間に織り込まれるのかでは全く意味が異なる。この時点では「後者」の動きになっている。その後、米時間28日のCME日経平均先物の動きもそれを裏付けるものとなっている。まず「安倍辞任」の株式市場への悪影響は軽微と考えていいだろう。

足元は後継者選びが関心の対象になっている。この時点で「総裁選有力候補」とされている3人の背景を探ってみたい。

  • 石破茂元幹事長
    過去の総裁選おいても党員の得票の多さを武器にしており、両院議員総会で自民党国会議員だけで決することになると、さながらフレームから外された格好となる。ただ、その決め方に対する一般党員の不満がかつてないほど高まる恐れもあり、次期総選挙に対し(自民党議員が)不安を感じることになる。
  • 岸田文雄政調会長
    両院議員総会で決すると「岸田政調会長」の得票が多くなりそうだ。相手が石破氏のみだと圧勝する可能性もある。ただ、やはり党員投票を実施せず決することは党員の不満が増す可能性があり、同様に次総選挙に対し(自民党議員が)不安を感じることになろう。
  • 菅義偉官房長官
    これまで安倍首相の後任に意欲を示していなかった菅氏だが、30日には総裁選出馬の意向を固めたと報じられている。会談を行った二階幹事長など党内有力者の支持を取り付けたものと考えられる。菅氏当選の場合は、完全なる安倍政治の継承であり、党員の不満は限られたものになりそうだ。菅氏は外交経験に乏しいドメスティック型の政治家だが、コロナ禍で首脳外交が事実上ストップしていることも追い風になる。


コロナ対策、金融政策に変更はない

アベノミクスの両輪である「日銀金融政策」に変更はない。日銀の黒田総裁の任期は2023年4月末までだが、今のところ任期途中での辞任は話題にもなっていない。他方、安倍首相が最後の仕事として「新型コロナ感染症の新たな取組方針」を取りまとめ、ここからさらに対策が進展していくことも株式市場は好感する可能性があるだろう。企業業績についても3月期決算企業の今第1四半期決算発表が終了したことで、通期見通しにもメドが付き始めており、コロナ禍による業績悪化を織り込み、今後の業績回復を織り込んでいくことになりそうだ。株式市場における個別銘柄に対する物色も、これまでの「コロナ追い風銘柄」や「コロナ無風グロース株」一辺倒から、コロナ影響が大きい業種や安値に放置されていたバリュー株に動意が見られるようになってきた。自動車、自動車部品、機械、金融あたりの主力株動向を注視していきたい。この動きは「後継首相が誰か?」には左右されないだろう。

日産自動車(7201)

デンソー(6902)

アマダ (6113)

東京海上ホールディングス(8766)

第一生命ホールディングス(8750)

三井住友フィナンシャルグループ(8316)


(株式ジャーナリスト 天海源一郎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。