『6月FOMCで見えてきたものと先行き』

米連邦制度理事会(FRB)は、6月14日、15日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、FFレート(=フェデラル・ファンド・レート)を前回5月会合の0.75%~1.00%から、1.50%~1.75%へと、0.75%引き上げました。0.75%の利上げ幅は通常(0.25%)の3倍のスピードで、1994年11月以来、約27年ぶりの大幅な引き上げとなります。会合後の記者会見でパウエル議長は、「金利を通常の水準に速やかに動かす」として、次回7月会合でも「0.5%~0.75%の利上げとなる公算が大きい」とコメントしました。

足元で世界的に問題視されている高インフレは、コロナ禍からの回復に伴う需要増や人手不足による賃金上昇に加え、ロシアのウクライナ侵攻による資源、農産物価格の上昇が大きく影響しています。パンデミックや戦争といった特殊要因が背景となっていることから、従来のような景気サイクルによる物価上昇とは異なる急速な変化が先行き見通しをより不透明にしてしまっていて、なかなか予測のできない状況といえそうです。

今回、FOMC参加者の経済見通しは、2022年の実質GDP成長率が前回3月の2.8%から1.7%に下方修正されたほか、2023年も2.2%から1.7%と、潜在成長率を大きく下回る水準になる見通しで、景気の減速が意識されています。また、失業率は2022年の3.7%から、2024年には4.1%へ上昇することが見込まれていますが、パウエル議長は「それでも歴史的に低水準」と判断しています。一方で、インフレ率は2022年の5.2%から、2024年には2.2%まで低下する見通しです。インフレ率の上昇を抑えるために、景気の減速を最小限に抑えつつ、通常の金利水準に戻していくことになりそうで、パウエル議長は引き続き難しい舵取りを迫られそうです。

さて、舵取りの指針となるのが会合参加者による今後の政策金利の見通し(ドットチャート)です。2022年末の政策金利は3.25%~3.50%になると予想されており、前回3月時点では1.75%~2.00%が中央値でしたので、たった3か月間で1.5%も水準が切り上がったことになります。次の7月会合以降、年内4回の会合で、合計1.75%の利上げを実施する見通しとなっており、7月に0.75%の利上げを実施すれば、それ以降の利上げ幅は縮小され、23年中に利上げを終了といったところでしょうか。ただし、大幅利上げにもかかわらず、インフレの早期収束がみられない場合は、大幅利上げが秋以降も続いてしまうリスクがあるため、インフレ関連の経済指標は依然として注視しておく必要があります。

今回の決定を受けた株式市場の反応は、消費者物価の大幅上昇などを背景に、大幅利上げへの警戒感を事前に織り込んで急落していたので、その反動で16日の日経平均は若干のリバウンドを見せました。ところが、スイス国立銀行が予想外の利上げに踏み切ったことなども「オーバーキル」への警戒感が強まる形となって、その後は世界同時株安の様相を呈しました(例えばNYダウは3万ドルの大台割れ、日経平均も26,000円割れ)。新型コロナウイルスが蔓延し始めた2020年3月安値(18,213ドル)から2022年1月高値(36,952ドル)までの38.2%押しに当たる水準(29,794ドル)に達したほか、コロナ前の高値(20年2月高値の29,568ドル)にも接近したことで、ひとまずリバウンドのタイミングが近づいているとみられます。ただし、日本株の魅力が高まっているとは言いにくい部分もあり、当面は政策関係者の発言、国内においては参院選の行方などに一喜一憂する方向感に欠ける状況が続きそうです。

(カイカ証券)

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