FRBの利上げは続く

米連邦準備制度理事会(FRB)は12月13日、14日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を従来の3.75%~4.00%から0.5%ポイント引き上げて、4.25%~4.50%とすることを決定しました。7会合連続の利上げで、2007年以来の水準となります。前回まで4回連続で0.75%ポイントの引き上げを行ってきましたが、今回は事前予想通り、利上げ幅縮小となりました。

FOMC声明では、前回同様に、引き続き長期的な雇用の最大化と2%の長期物価目標の達成を目指すとしています。そのためには十分に景気抑制的な政策スタンスを実現するために、継続的な利上げが適切になるとしています。また、これまでの金融引き締め効果が経済活動やインフレに時間差で現れることも考慮するとしているほか、バランスシートの縮小(QT)を進めていくとしています。そして、政策スタンスを評価する際には、これまで通り経済指標の動向などを重視するとしています。加えて、状況に応じて、臨機応変な政策対応をする用意があるとしており、これには新型コロナの感染状況や労働市場の変化、インフレ圧力や金融動向、国際情勢なども考慮するといったことが述べられています。

今回ガイダンスは前回の内容を踏襲するものでしたが、ドットチャートを見ると、利上げ幅拡大を示唆するややタカ派的な内容といえそうです。2023年末の政策金利は前回会合の4.50%~4.75%から5.00%~5.25%に0.5%ポイント上昇しました。さらに、中央値より上の水準を予想したFOMC参加者が7人もおり、ターミナルレートのさらなる上振れの可能性も示唆されています。来年2月、3月、5月の会合で、少なくとも都合0.75%ポイントの追加利上げが想定されます。そうしたややタカ派的な想定の背景には労働需給のひっ迫が影響しているようです。11月の雇用統計では非農業部門の雇用者数が、予想の20万人増を上回る26.3万人増となったほか、失業率も3.7%で前月比横ばいを維持、さらに平均時給は前年同月比5.1%上昇と、伸びが加速しています。大手企業の人員削減のニュースが伝えられていますが、人手不足の状況は続いているとみられます。インフレ指標の落ち着きが見られる中、労働需給のひっ迫が、賃金上昇による物価高を招くリスクを警戒しているようです。

FOMC参加者の経済見通しでも23年、24年の失業率の見通しは4.6%と、前回見通しから引き上げられています。雇用環境の悪化を想定する一方、インフレ圧力が継続するとの見方で、GDP成長率は前回の1.2%成長から0.5%成長に下方修正されています。23年前半での利上げ終了と、経済指標によっては23年年末頃の利下げも想定されそうです。

今年3月から始まったFRBの利上げは、これまでにない急ピッチなものになりました。しかし、世界的なインフレはコロナ禍からの経済正常化が進み始めた21年から始まっていて、ロシアのウクライナ侵攻以前から資源価格の上昇は加速。パウエル議長は当初、インフレは一時的との見方を持っており、政策対応が遅れた経緯があります。23年はインフレと景気のバランスを見極めつつ、刀を鞘に納めるタイミングを計らなければなりません。マーケットの反応は10年債利回りが会合後も低下を続け、株式市場は一拍おいて大幅安となりました。今回のややタカ派的な内容が経済のオーバーキルにつながるのではないかという懸念が高まった結果とも言えそうです。

(カイカ証券)

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