FRBは3回連続の大幅利上げ

 米連邦準備制度理事会(FRB)は9月20日・21日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)において、政策金利を0.75%引き上げ、3.00~3.25%とすることを決定しました。通常(0.25%)の3倍となる大幅な利上げは6月の会合以来3会合連続となります。また、利上げは今年5回目で、政策金利の水準は2008年以来の高水準となるなか、FOMC声明の中で「(インフレ低下が確認できるまで)利上げ継続が適切」として、今後も引き締めを続けていくことを明言しました。これを受けて、ご存知の通り株式市場は急落、債券市場では10年債利回りは景気悪化を意識して低下したものの、2年債を中心に短期金利は上昇、為替もドル買いが進みました。

 会合参加者による政策金利の見通しの中央値は、ドットチャートが示すように、22年末の時点で4.25~4.50%と、6月のFOMCで示された3.25~3.50%から大きく上方修正されました。さらに、2023年末時点では4.50~4.75%と、同様に1.00%の引き上げとなりました。2024年末は見方が大きく分かれていますが、インフレは鎮静化するものの、景気の減速が意識され、利下げに向かうとの見通しです。FRBは今後の経済指標をにらみながら、目標達成を妨げるようなリスクが現れた時には金融政策のスタンスを適切に調節する用意があるとしていて、ハト派的な一面も見せました。ただ、声明の前回会合との相違点は「支出と生産の最近の指標は弱まっている」としていた表現を「最近の指標は、支出と生産の緩やかな伸びを示している」とやや強めて、インフレに関しては依然としてタカ派的な印象を与えるものとなりました。これには消費者や企業の間で物価高が続くとの見方が定着して、インフレが長期化するとの懸念の表れとみられます。

 年内にあと2回予定されているFOMC(11月1日・2日、12月13日・14日)では合計1.25%の利上げが見込まれます(11月に0.75%、12月に0.5%の利上げが有力視)。さらに2023年1月のFOMC(1月31日~2月1日)でも0.25%の利上げが見込まれます。8月の消費者物価指数(CPI)が事前予想を上回る前年同月比8.3%の上昇となったことで、インフレ警戒感が一段と高まりましたが、11月会合及び12月会合までに発表される9月CPI、10月CPI、11月CPIを加味して、金利の引き上げ幅が決まるとみられ、それらの内容に注目しておくと同時に指標発表直前で下手にリスクを取りに行くような投資行動を取らないようにしておく必要があります。

 さて、金利見通しの公表と同時に3年先までの実質経済成長率、失業率、インフレ率(いずれも中央値)も示されています。実質GDP成長率は2022年が前回6月の1.7%から0.2%に大幅下方修正されたほか、2023年も1.7%から1.2%に引き下げられました。また、失業率及びインフレ率は前回予想から引き上げられるなど、依然として厳しい情勢が伝わってきます。2023年はインフレが落ち着けば、年後半から利下げに転じるとみられますが、そうした具体的な方向性が見えてくれば、株式市場も底入れから反転に向かうものと思われます。足元はリスクが複数混在しており、正確に先行きを予測することがかなり難しいと感じている投資家はプロも含めて多いでしょう。「休むも相場」という相場格言もありますが、個人投資家は過度にリスクを取りに行く必要がない分、いったんキャッシュ化の割合を増やしたり、安定したポートフォリオに組み替えておくといった対応をしていくと良いかもしれません。

(カイカ証券)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。