【米国市場】金利市場には金融収縮の兆候?【転換点】

 高値圏でのもみ合いが続く米国株式市場。金利市場から俯瞰すると、その上昇基調にはすでに転換点が訪れているように思われる。今回は金利の視点から米国株式市場を分解・整理した。

結論:

 単純に金利の観点だけからすると、現在の米国株式市場はあまり妙味の無い市場にみえる。中央銀行による度重なる利上げの結果、各株式指数にみる配当利回りが市中金利に比べると見劣りし始めたからだ。
 ここからの相場は、好業績(アクセル)と金利上昇(ブレーキ)とのせめぎあいとなる。低金利のアシストを失ったいま、米国株式市場がこれまでの上昇スピードと値幅を保つことは難しい。
 為替については、米ドル・ユーロ・日本円の間での不美人投票の結果、ややドル安となりそうな気配が濃厚だ。
 今後は、NYSE総合指数は米国株式市場が上昇相場から下落相場への転換を知らせる「カナリア」役となるかもしれない。よほどのアクシデントでもない限り、金利上昇の流れは中央銀行も変えられないことが、その背景である。

ポイント:

  • 目先、重要と思われる市場要因は
    1. 短期金利動向
    2. 指標性が高いのは3ヵ月物と2年物金利。

    3. 各企業の信用リスク
    4. 企業債の借り換えが短期市場へ緊急避難するケースが目立つため。
      (信用リスクの悪化は、さらに企業の起債(債券の発行)判断を困難にする)

  • イールドカーブ(短期~長期の金利体系)の平坦化 又は 超長期の逆転現象は
    1. 当面の満期到来による借換需要にとっては大きな問題ではなさそう。
    2. 前回借入れ時よりも、現在の金利水準が低いことがその理由。

    3. ただし、過去の経験則から、金利の平坦化が景気後退の兆しとなっているケースが見受けられる点には留意。

景気後退の前兆?
 米国債の2年-10年スプレッド(利回り格差・上記図1、1983年4月1日より2018年4月24日まで)の縮小に歯止めがきかず、イールドカーブ(短期~長期の金利体系)の平坦化が景気後退の兆しとの指摘する向きは市場筋だけではない。

空前の企業債発行に潜む影
 空前の水準で推移する企業債の起債(発行)残高状況(図2、1983年4月1日より2017年7月1日まで)。心配される借入依存度も、上昇基調が9年を超える相場のおかげで、株式の市場価値に対する割合は、下記 図3(1983年4月1日より2017年7月1日まで)にある通り相対的に低いレベルにある。これは非常に明るい材料のひとつ。
 企業債発行の大半を占める借り換え需要だが、前回の発行時期は2006~2007年頃が中心だと思われる(図4、1983年4月1日より2017年7月1日まで)。
 2006~2007年当時の米国債(10年物)の利回り水準は3.80%~5.30%のレンジにあり、現行水準での借り換えでは痛みを感じない企業は多いかもしれない(図5、2006年1月3日より2018年4月24日まで)。
投資家の観点から・金利商品としての株式(配当利回り) 
 米国債や他の市中金利と比較した場合、現在の株価水準は正当性を失いつつある(図6、2013年4月1日より2018年4月24日まで)。利回り投資家からすると、リスク資産とされる各株式市場の配当利回りが、非リスク資産とされる米国債の利回りを下回る状況は受け入れにくい。株価上昇を支え続けてきた低金利環境が過去となった現在、利回り商品としての観点からすると、現在の各株式指数は魅力に欠ける。
株式発行企業の観点から・借入条件は実勢金利以上に悪化している
 現在の起債(債券の発行)環境について、各企業は「潮目が変わりつつある」と考えているのかもしれない。実際、借換・新規発行ともに昨年より増額が予想される中、第1四半期の新規発行額はやや低迷している。(図7)

 この理由としては、主に下記の2つが原因のようだ。

  • 米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)によるたび重なる利上げ
  • (過去2年強の間で合計6回・1.5%の利上げ)

  • 連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ幅を上回る市中金利の上昇(図8)。

  • 一方で、信用リスクについては、投資適格債・ハイイールド債(=ジャンク債。投資適格とみなされない、信用リスクの高い債券)ともに、2006~2007年の発行当時のレンジ内にある(このあたりの発行分に今年、借換需要が生じると思われることは図4にて例示した。)2月のVIXショック以降の影響が解消に向かう動きは見受けられない。(図9、CDS指数とは信用リスクを数値化した指数)


目が離せない短期金融市場
 上記、図8(金利の上昇)、及び図9(信用状況は若干悪化)に見る起債(債券の発行)条件劣化を理由に、資金調達はコマーシャルペーパー(図10、CP・短期の資金調達を目的とした無担保の約束手形)などへ緊急避難していることがわかる。ちなみに、これが短期金利(米ドルLiborなど)上昇の原因ともされている。
より危険にさらされる中小企業群
 直近公表されている商業銀行のビジネス向けローン(以下、商工ローン)の残高は昨年末以降、騰勢を強めている。これも短期金利(米ドルLiborなど)急騰の原因とされる。借りるから上がり、上がっても借りるという状況が続いている。これも企業の起債(債券の発行)見送りによる、一時的な短期市場依存の動きと考えられる(図11)。
 また、米国の商工ローンは、その残高の約80%が2年前後の満期だ。つまり、これまでの金利上昇の影響をモロに受けていることになる。一段の金利上昇は、粗利率が低く、資金調達手段も限られる中小企業にとって、まさに死活問題となる。

長期金利も異変が続いている
 米国連邦準備制度委員会が量的緩和終了の声明を行った2014年10月以降、米国債金利が銀行間金利(いずれも30年)を上回る状況が続いている(図12、2013年4月1日より2018年4月24日まで)。リスクフリーとされる米国債金利が、信用リスクのある銀行間金利よりも高いという、異常な状態である。

NYSE総合指数の動向に注目
 ハイイールド債(=ジャンク債。投資適格とみなされない、信用リスクの高い債券)のCDS指数(信用リスクを数値化した指数)構成銘柄のうち、その多くはNYSE総合指数の構成銘柄でもある。ここまでの流れからすると、NYSE総合指数は米国株式市場が上昇相場から下落相場へ転換を知らせるカナリアの役割を担うのかもしれない(図13、2013年4月1日より2018年4月24日まで)。

まとめ

 ここからの相場は、業績(アクセル)と金利上昇(ブレーキ)とのせめぎあいとなる。

  • 目先は好業績が株価を牽引する可能性が高い
  • 金利の上昇は少なくとも2つの側面から株価の上昇を抑制する。
    1. 投資家の観点からすると、米国債金利を下回る配当利回りは受け入れ難い。
    2. 企業側の観点からすると、資金調達コスト(金利)の上昇が業績を圧迫し始めている。

 とするならば、米国株式市場がこれまでの上昇スピードと値幅を保つことは難しくなるばかりではなく、むしろ、下落のリスクが高まることになる。

 為替については、

  • 長期的・積極的な米国への資金流入は見受けられず、これからも見込めそうにない
  • 実際、米国の貿易・経常 収支は現在、ともに赤字である。

 今後の展開は米ドル・ユーロ・日本円の間での不美人投票の結果、ややドル安となりそうな気配が濃厚だと考えられる。

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。