いつまで続く?レモンサワーブーム

いよいよ夏本番が近付いてきました。首都圏では、緊急事態宣言こそ解除されましたが、まん延防止等重点措置が継続されている地域も多く、飲酒を伴う外食には制限がかかっています。ワクチン接種率を一定水準まで上昇させ、新規感染者数が抑えられないと、なかなか緩和されそうにありません。それどころか、田村厚生労働相は、東京五輪期間中に、緊急事態宣言を発令する可能性に関し「国民の健康、命が大事だから、当然あり得る」と述べたと伝わっており、新規感染者数の推移次第では再度の緊急事態宣言発令の可能性もあります。

昨年、3月に新型コロナウイルスの感染が拡大し始め、5月には外出自粛などの措置が取られるようになりました。外出機会が減少し、飲食は外食を控え自宅での内食が当たり前になる急激な変化が起こりました。GoToキャンペーンなどで一時持ち直したものの、それ以降も新規感染者数のリバウンドが繰り返され、いわゆる「ニューノーマルな生活」がすでに1年以上に及んでいる状況です。こうした外で飲む機会が大きく減少する一方、家庭での酒類消費が拡大している状況は、家計調査にも表れているところです。昨年4月の実質増減率は+21%となり、その後、8月まで2桁の伸びが続きました。10月は前年の消費増税の反動で高い数字となり、今年1月までは比較的高い伸びが続いたものの、前年の発射台が高まった今年2月以降は落ち着きを取り戻したといった格好です。

外飲みでは「とりあえずビール」の後、ハイボールや酎ハイ、サワーなど好みのお酒に向かっていく流れが一般的でしたが、家庭でもそうした傾向が顕著になっているようです。つまり、若い人を中心に食中酒として、ワインなどと同様にサワーを飲む習慣が一般化してきているようなのです。サワーの中でも最近各社が明らかに力を入れているのは「レモンサワー」でしょう。4、5年前からブームが続いていると言われていますが、特にここ1、2年は「家飲み需要」と「健康志向」を追い風に一大市場を築いてきました。そもそもの始まりは缶酎ハイや瓶入りカクテルなど、ふたを開けるとすぐに飲めるアルコール飲料「RTD(レディ・トゥ・ドリンク)」の登場です。さきがけは1984年に登場した『タカラcanチューハイ』に遡ることが出来そうですが、やはり、2001年7月にキリンが発売した『氷結』(ウォッカベースの缶入りチューハイ)シリーズが火付け役と言えるでしょう。2005年にはサントリーが『-196°Cストロングゼロ』シリーズを投入、さらに2009年には低アルコールリキュール『ほろよい』シリーズが登場し、CMの雰囲気やおしゃれなデザイン、そして幅広く好まれる飲み口で若い女性を中心に人気となりました。

そして、レモンサワーブームの明確なきっかけとなったのは、居酒屋で飲むのと同じレモンサワーを家でも飲めるようにしたサントリーの『こだわり酒場のレモンサワーの素』(炭酸で割って自分好みの濃さにする)とみられ、発売された2017年ころからレモンサワーの需要が急拡大し、RTDのサワーを各社が競って発売したことでブームがさらに加速しました。梅沢富美男さんのCMでおなじみの『こだわり酒場のレモンサワー』を展開するサントリーは最近ノンアル市場にも参入し、今年3月に発売した『のんある晩酌レモンサワー』は、2カ月で1,000万本のヒットとなっています。また、阿部寛さんがCMに起用されたコカ・コーラの『檸檬堂』は2019年10月に全国展開を開始しましたが、あまりの人気に生産が間に合わなくなり、SNSでも度々話題になっていました。その他、キリンの『発酵レモンサワー』は今年3月16日の発売からわずか4日で1,000万本を出荷し、過去10年間でキリンRTD新商品の最速記録を達成、『特製レモンサワー~追いレモン潤沢仕立て~』、『無添加本搾りレモン』なども人気となっています。サッポロの『濃いめのレモンサワー』は今年3月に発売され、1カ月で2,000万本を突破しました。

ちなみにレモンサワー市場は今年、販売数量が前年比1.3倍の1億4,178万ケースに達すると予想されています。上述してきた通り、アルコール飲料業界は、コロナ禍で業務用需要が低迷する一方、高付加価値のRTDが家庭での消費拡大を背景に大きな伸びとなっています。飲料メーカーの業績下支え役として、各社のRTD商品の構成比率も上昇しており、株価への好影響も期待されてくるかもしれません。路上飲みでも新型コロナウイルスに感染する事例は多々ありますので、オリンピックは自宅でテレビ観戦することにし、お気に入りのレモンサワーで盛り上がってみるのはいかがでしょう。


(eワラント証券)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。