12月8日~10日東京ビッグサイトで開催された「エコプロ2021」に行ってきた。環境に配慮した製品や技術を集めた展示会で2年ぶりのリアル開催だ。
脱炭素社会の実現に貢献する技術、産官学民それぞれの取り組みなどが紹介されている。
会場には中学生などの集団もいて、子供を含めた一般の人にもわかりやすい工夫がされているのが特徴だ。展示会の中には、ビジネス向け商談用のもの、専門的すぎるものもあるので、一般参加ならこういうものがおすすめだ。今回は私も社会科見学をしてきた気分だ。
一番社会科見学的に楽しんだのが JFE(5411)のブースで、「鉄ってどうやってつくるの?」というコーナーで鉄鉱石を触ることができた。ごろごろした石の周りに赤っぽい粉がついている。錆の色ってこれに近いなあと思う。この赤色が服などにつくと取れなくなるそうで、薄いゴム手袋をして持たせてもらう。鉄鋼石価格が上がってますなどとニュースにはよく出てくるが、実物は見るのもさわるのも初めてだ。ずっしりと重い。さすが鉄鉱石。この約6割が鉄になるのだという。会場にあったのは1.6トンの鉄鉱石で、これで作られる鉄の量にあたるものが延べ棒のような形で置いてあった。原料の次は作り方だ。鉄を作るときにはCO2をたくさん排出するので今は水素を活用する技術が開発されていることが紹介されている。こうした流れでブースを見て回ることができた。
環境関連はこのところずっと投資テーマになっているが、最近「CCS」という言葉をよく聞く。Carbon dioxide Capture and Storageの略で、工場や火力発電所から出る二酸化炭素を空気中に出す前に地中深くに埋める技術だ。しかし、二酸化炭素のようなものを地中に埋めると聞いてもピンとこなかったが、ようやく理解できた。これもまたお子さん向けのかわいい資料をいただいてお話をうかがう。北海道苫小牧で実証実験がなされているが、埋めるには適した地層があるのだそう。まず砂岩などの隙間の多い地層があること。この隙間に二酸化炭素をためる。そしてその貯める層の上に蓋になる泥岩などの層が必要だ。その砂岩などの層まで地上から圧入井を掘って二酸化炭素を注入する。岩石のつぶつぶの間に貯められた二酸化炭素はだんだん地層水に溶けていき、周辺の岩石と反応して鉱物になっていくのだそうだ。その後も漏れたり悪影響が出ていないか、きちんと計測され、安全対策も講じられているという。
今回はテーマゾーンとして「ナノセルロース」と植物性食品を扱う「プラントベースワールド」、そして「海洋プラスチックごみ対策パビリオン」が設けられていた。今回はこれまで私が取材したことのない「海洋プラスチックごみ対策」を見て回ることにした。鼻にストローが刺さったウミガメの写真で一気にその深刻さが意識された海洋汚染問題。えさと間違えて食べてしまうこともあり、プラスチックごみは海洋生物を死に至らしめる非常に危険なものになっている。この問題の解決に取り組むCLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)参加企業が出展していた。CLOMAではリサイクルや代替素材の開発などにより2050年までに容器包装等のプラスチック製品の100%リサイクルを目指している。食品包装フィルムでシェア3割超を占める東洋紡(3101)では、大手の責任としてまずはフィルムを薄くすることから始めている。海洋ごみといっても元は陸上の普通のごみで、それが流されて海にたどり着くので、まずごみの全体量を減らすことが大事なのだそうだ。見せていただいたフィルムはレトルトカレーが入るようなもので、手で触ってわかるほど薄くなっていた。また、住友重機(6302)では全リサイクルでペットボトルをつくる機械を手掛けている。すべての材料をリサイクルにすると少し色がついてしまいきれいに見えない。そこで少し青い色をつけて成型するという。ウエストワンという会社が紹介していた「サイクルプラス」というものはポリエチレンやポリプロピレンを生分解性に改質するマスターバッチ添加剤で、2%添加するだけで最終的には水と二酸化炭素およびバイオマスに完全分解され、マイクロプラスチックが残らないというのだ。いつから分解が始まるかなど難しい点もあるのだろうが、完全分解できるならすばらしい。
他にもインフラ、コロナ対策など様々な出展があり、とても見切れなかった。この「エコプロ」は投資に直結はしないかもしれないが、社会科見学をしたい方にはおすすめの展示会だ。来年も12月に行われる予定なのでお近くの方は足を運んでみてはいかがだろうか。
(フリーアナウンサー/証券アナリスト かのうち あやこ)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。