かのうちあやこの「エコプロ2022」レポート

2022年12月7日~9日の3日間、東京ビッグサイトで「エコプロ2022~環境問題とSDGsに向き合い持続可能な社会へ~」が開催された。日本最大級の環境に関する展示会で、持続可能な社会の実現を目指し企業・団体が脱炭素に貢献する新素材やリサイクル製品などを出展した。

エコプロは今回が24回目。新型コロナウイルス禍で2020年にはオンライン開催のみだった、前回21年からは実際の会場での展示が再開されている。さらにオンライン開催も続けており、今年は12月16日 17:00までオンライン展アーカイブ放送が行われている。

昨年はJFE(5411)ブースで鉄鉱石の実物を初めて見て触って感動したのだったが、今年は日本製鉄(5401)のブースを見学。水素ステーション施設などで採用されている高圧水素用ステンレス鋼が展示されていた。シアターでは人類と鉄の歴史から振り返っていて、数千年の間続いてきた製鉄の技術を変えるという大変な変革なのだということが感じられた。そもそも鉄をつくるとは、鉄鉱石(酸化鉄FeO)に一酸化炭素(CO)を加えて鉄(Fe)を取り出す作業で、その際必ず二酸化炭素(CO₂)が出てしまう。その際に一酸化炭素(CO)ではなく水素(H₂)を使えば、結びついてできるのは水(H₂O)で、二酸化炭素(CO₂)を出さずに済む。ただしそれでは炉の温度が下がってしまうので水素を高温にすることが求められる。これが「水素還元製鉄」技術で、日本では08年から世界に先駆けて研究が行われ、現在も複数の技術アプローチが行われているという。

東京都政策企画局(東京ベイeSGプロジェクト)では、官民学連携コミュニティ「東京ベイeSGパートナー」を立ち上げ今回ともに出展している。今回ビデオゲーム「マインクラフト」の作品コンテストである「Minecraftカップ2022全国大会」と連携し、東京ブロックの特別賞として「東京ベイeSG賞」を新設した。ブースで受賞作品「雷さまの方舟」を見ることができたが、雷のエネルギーで空飛ぶ方舟を動かし、地上の生物を保護するほか、雨を降らせ植物を再生するという循環型社会がつくられていた。方舟の中には、水のろ過装置や風力・バイオマス発電も整備されている。破壊された自然を再生し動物と共生していく方法を考えている。これを創ったのはなんと小学2年生!!これで未来の地球は大丈夫かも、と思えた。そのほかブース自体も東京ベイeSGパートナーである大田区の会社の折り紙のような装飾壁面で造られていた。また、太陽光発電舗装システムも紹介されていた。道路の脇や駐車場の余った場所なども有効活用できるようだ。コラス・ジャパンが東亜道路(1882)と共同で2022年6月に発売を開始している。

エプソン(6724)が展示した、使用済みの紙から新たな紙を生産するオフィス製紙機「PaperLab」はぜひ普及してほしいと思った。紙の再生に通常大量に使われる水を使わずに、機械で紙を繊維状にし、これを雪のように降らせて圧縮しシート状にするのだという。世界で初公開の新コンセプトモデルでは、情報漏洩に気を使い専用のシュレッダーを作った。製紙機はコピー機4台分くらいの大きさがあるが、シュレッダーならコピー機0.5台分くらいの小さな箱で、小学校やオフィスに気軽においてもらい、それを回収して区役所などの製紙機でまとめてリサイクルするという提案だ。できあがった紙はつるつるできれい。色をつけてアップサイクルすることもできる。

環境省ブースでは、電動部材すべてに次世代半導体材料GaN(窒化ガリウム)を使用した電気自動車All GaN Vehicle(オールガンビークル)や、車体にCNF(セルロースナノファイバー)を活用した

NanO CellulOse Vehicle(ナノセルロースヴィークル)などを展示していた。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度等の特性を有するセルロースナノファイバー(CNF)は期待の素材で、コストの問題もあってもう何年もエコプロでは見ている。脱炭素化の動きが加速するなか、19年末には走行テストも行われ、着実に進歩はしているようだ。

行くまではどうかなあと思っていても、行ってみるとやはり楽しいんです、展示会。最近ではハイブリッド展も増え、遠くの方でも、日中お忙しい方でもご覧いただけるようになりました。ご興味のあるところをちょっとのぞいてみていただくと楽しいと思います。

さて、これまで展示会のご報告を中心にお送りいたしましたこのコラムはこれで最終回です。長い間お付き合いいただきましてありがとうございました。


(フリーアナウンサー/証券アナリスト かのうち あやこ)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。