かのうちあやこの「オートモーティブ ワールド セミナー 2020年」レポート

1月15日~17日に東京ビッグサイトで開かれた「オートモーティブ ワールド セミナー 2020年」で、ディー・エヌ・エー フェロー 二見 徹氏の「AI×インターネットが創るモビリティの未来」、SBドライブ代表取締役社長 兼 CEO佐治 友基氏の「自動運転バスの実用化について」、テクノメディア代表取締役・国際自動車ジャーナリスト 清水 和夫氏による「分かりやすい自動運転の受容性」、そしてトヨタ自動車先進技術開発カンパニー フェローで内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 自動運転担当 プログラムディレクター 葛巻 清吾氏による「ズバリ、自動運転の現在地は?」と題した講演を聞いてきた。

まず驚いた事は、日本が実は自動運転の法制化について進んでいるという複数の方からの指摘だった。私は、規制が多くて日本は遅れている、だから自動運転が進まない、とばかり思っていた。しかし、実は昨年の改正で国としての法整備は日本が最も進んでいることになったのだと言う。2020年東京五輪に間に合わせたいということもあったのだろうが、「警察庁が認めるとは思っていなかった」という素直な感想を漏らす講演者もいた。そして、「それだけ日本は困っていると言う事でもある」という。高齢者によるブレーキ踏み間違いなどの事故が多発し社会問題となっている。また、人口の減った地域社会では高齢化が一層進み、免許を返納した人たちが買い物や通院の足に困っている。地方のバス会社の85%が赤字で、運行本数が極端に少ない。人手不足でもある。しかしこのラストワンマイルが生活者にとっては重要だ。さらにこれは医療財政の問題にもつながる。家にこもってしまうのは健康リスクも増加させるのだ。

この生活の足という意味でSBドライブはバスにこだわっているのだそうだ。自動運転バスは大阪と柏で実証実験中だ。ライブ実況動画を見せていただいたが、ゴンドラみたいな車体でハンドルがない。これが時速20キロメートルと言う低速で何本も走る。東京都の芝公園でも低速運転車を走らせた。公道ではない公園などの敷地内、実験センター、フラワーパーク、羽田空港などでも走らせている。神奈川のロボット特区でも。芝公園では時速3.6キロメートルというスピードで、特にガードレールのような区切りもないところで走っていて、ベビーカーや人が列からはみ出して膨らんだような状況で接触の危険を察知するとピタッと止まる。実験を行ったある地方ではこの低速自動運転車が歓迎されている垂れ幕があった。潜在的なニーズはこれから顕在化してくるだろう。

バスは社内の事故が3分の1だ。立ち上がって転んでしまう人がいる。こうしたことにも目を向け、AIによる画像認識で、立ち上がった人がいると自動的に「運転中は立ち上がらないでください」とアナウンスが流れるようにシステムを作った。自動運転でなくともこのシステムは欲しいと言うバス会社があるそうだ。自動運転バスは今年実用化を目指している(特定地域で)。そして2023年には無人化したいという。自動運転と人との共存が求められている。新しい技術にどれだけリアリティーが持てるか。これが鍵だと指摘されていた。

他にも実証実験の模様を動画で見ることができた。昨年DeNAと日産自動車は、無人運転車によるオンデマンド配車サービス「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験を、横浜市みなとみらい地区で行った。試乗のための試乗ではなく、駅に行く、買い物に行く人たちが普通にタクシーのように利用していた。さらに先には、コンシェルジュ機能を持たせる。

しかし、葛巻氏からは自動運転の現在地は「正直現在は踊り場ではないか」とのお話もあった。ここまで技術は進歩してきた。ここから安全性の評価がなされていく、その踊り場にあると言うことだろうか。サイバーセキュリティという意味では「今のままではおぼつかない」そうだ。

産業革命の歴史、インターネットの歴史に触れるお話もおふたりから出た。文明評論家ジェレミー・リフキンによれば産業革命とは輸送と通信、動力に同時に変革が起きることを指すのだという。現在、電話からインターネットという通信の変革は起きた。すると動力は石油から再生可能エネルギーに、輸送は自動車から次のもの=自動運転に変わるはずであろうか。その新しい輸送も動力もベースになるのはインターネットになる、インターネットがつなぐ。今はその途中だろう。ピラミッド型の資本主義から、新たな共有型の経済を創出する時期に来ているというお話だった。


(フリーアナウンサー / 証券アナリスト かのうちあやこ)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。