かのうちあやこの「メタバース」レポート

足元の株式市場ではグロース株(成長株)からバリュー株(割安株)に物色がシフトしていると言われている。米国の大型テック株、半導体関連株の下落が目に付く。2022年の注目テーマとして取り上げられてきたメタバース関連、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック、FB)やビュージックス(VUZI)などの株価はさえない。

しかし、金利が上昇しようと全体相場がいまいちだろうと本当に業績が伸びるなら成長株には資金が向かう、と思う。では「メタバース」は今年のテーマとしてどうなのだろうか。

旧フェイスブックが2021年10月28日に社名を「メタ」、正式には「Meta Platforms(メタ・プラットフォームズ)」に変更したのをきっかけに一気に注目された「メタバース」だが、私は「セカンドライフ」の記憶がよみがえり斜めに見てしまっていた。覚えておられるだろうか。2003年に運営が開始された「ユーザーによって創られた、インターネット最大の3D仮想世界」で、アバターの服など様々なネット上のアイテムが売買され億を稼いだ子供がいたり、ネット内の建物に広告を出す企業があったりと大変な話題だった。私も実際に試そうとしたが自分のPCのスペックのせいでうまくその世界に入れず、そうこうするうちに短期間で世間の話題にも上らなくなってしまった。3D仮想空間は今回こそ大きなテーマになるのだろうか。

改めて「メタバース」とは何か。ネット上に作られた仮想空間を表す造語で、「メタ=Meta」は「超越」を意味し、「バース=verse」は宇宙や世界を意味するUniverseの後半部分を取ったものだそうだ。SF作家 Neal Stephensonが1992年に刊行した「SnowCrash」に登場する。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの技術を活用して、自分の分身(アバター)がネット上で自由に活動できる仮想空間のことを言う。わかりやすいのはゲームだろう。例えば任天堂(7974)「どうぶつの森」のように、自分の島をもち、人々と交流する。また、「マインクラフト」では大規模なライブが開催されたりしている。コロナ禍のなかで仮想空間内なら遠くの人にも会える、集まれるといった利点が活きた。「メタバース」という言葉こそ使っていなかったが、すでに身近なものになっていると言える。

これらが可能になったのは技術の発展である。デジタル音痴の私のPCでさえかつてセカンドライフに耐えられなかったようなことはもうない。スマホもある。高速・大容量の通信技術が発達したことで双方向のやりとりがスムースにできるようになった。さらに仮想通貨やNFT(非代替性トークン、デジタル作品等の所有権を保証するデジタル技術)により、仮想空間内の売買もより行いやすくなった。ただVRゴーグルをつけて3次元でものを見るというのではなく、交流活動があるところがミソである。

ということは注目される業界はメディア、広告、コンテンツ、そして金融(Fintech)になりそうだ。

今でも仮想空間を前提としているゲーム企業は言ってみれば全部メタバース関連になるかもしれない。その中で現在積極的に取り組んでいると言えそうなのはバーチャルライブ配信アプリの「REALITY」を展開するグリー(3632)だろうか。21年8月にメタバース事業への参入を発表しており、今後2~3年で100億円規模の投資を行い、全世界で数億人のユーザー獲得を目指す方針で、株価も既に反応している。先に例にあげた任天堂、NFTに前向きなバンダイナムコホールディングス(7832)、2大MMORPGをもつスクウェア・エニックス・ホールディングス(9684)なども有力か。ハードも持つゲーム関連でもあり、傘下のSIEとSMEがメタバース/NFT関連事業を手掛けるソニーグループ(6758)もはずせない。

また、これらを支える通信、最先端半導体、半導体製造装置など幅広いセクターにも影響があるだろう。世界最大のテクノロジー見本市「CES」でパナソニック(6752)の子会社が軽量250グラムのVRグラスを発表した。軽くて負担の少ない端末は必要だろう。CESでは電子回路が組み込まれたコンタクトレンズなんていうものも出ていたそうだ。

インターネットはWeb3.0と捉えられる新たな変革期にあるとも言われているそうだ。メタバースはその潮流のひとつ。米国では仮想大学キャンパス「メタバーシティ」が今年登場し、ビル・ゲイツ氏は2~3年でほとんどの会議はバーチャルに移行すると指摘している。これから法的な整備などが必要だろうが、私たちの生活を変えていくものになるのかもしれない。


(フリーアナウンサー/証券アナリスト かのうち あやこ)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。