3月9日(水)~12日(土)、東京ビッグサイトで開催されたロボット専門展「2022国際ロボット展(iREX2022)」に行ってきた。初のオンライン展示会「iREX ONLINE」も、リアル開催の期間をはさんで見られるようになっている。
国際ロボット展は、1974年の初開催以降、2年に一度の開催で、今回で24回目を迎え、“世界最大規模のロボット専門展” として国内外から高く評価されている。今回は、「ロボットがつなぐ人に優しい社会」をテーマに、人とロボットが共存・協働する社会を目指して開催された。
たしかに今回、協働ロボットの展示が増えていたように思う。前々回のロボット展だっただろうか、全てが黄色いはずのファナック(6954)のブースのなかで緑色のロボットが展示されていた。人と同じ場所で働ける安全性を意識した協働ロボットだということだった。
協働ロボットとは、安全柵なしで人と一緒に作業することができるロボットである。従来の産業用ロボットは人と離して策で囲い、ロボットだけで作業する必要があった。人の代わりに単純作業や危険な作業を行うイメージだ。それが、労働安全衛生規則の改定、技術の進歩でロボット本体に安全センサーを組み込むなど人に対する安全性を確保できるようになったことから、同じ場所で人と人の間に入って各種作業が行えるようになったのだ。そのため、狭い場所でもロボットが導入できるようになり、設置費用も安くなった。中小企業などでもロボットを導入するハードルが下がったのだ。配線などの面倒を省くためのワンストップ型を安川電機(6506)ブースで見た。素人目にはステンレス厨房機器のように見える箱にアーム型ロボットが載っていて、これをガラガラ運んでいけば良いだけならずいぶんと設置も簡単になったのだろうと思う。
また、ロボットに作業を教えるにも人が直接ロボットを手で動かしてこうするんだよと教えるとそのままその作業を覚えてくれたり、タブレットのようなもので直感的に操作できたりと、ソフト面でも導入しやすくなっている。難しいプログラミングなどが不要なのだ。
川崎重工(7012)の搬送ロボットは液晶画面に顔を表示させている。「人と一緒に働くならコミュニケーションがとれないとね」と説明員さんがおっしゃっていたのが印象に残った。川崎重工ではドローン、自動搬送ロボットなどを組み合わせてラストワンマイルの物流の課題を解決する提案を行っていた。その自動搬送ロボットは、液晶に表示されているのはかわいい顔だが非常にタフで悪路でも物が運べる。カワサキの4輪バギーの足回りの技術が活かされている。
そして川崎重工ではヒューマノイドロボットも紹介していた。「Kaleido(カレイド)」は子供のころアニメで見たような等身大のヒト型ロボットで、ひざ関節がしっかり曲がり正座ができる。腕立て伏せをし、高所作業を行うところが披露され、会場を沸かせた。また、開発中の四脚歩行ロボット「RHP Bex」が初公開された。「もののけ姫」に出てくるシカのような姿で、蹄のような足でとことこ歩いたかと思えば、膝と腹部から車輪を出して走行モードにトランスフォームする。歩いて農場の中の狭い通路にもついて行って収穫したトマトやキャベツを載せ、広い場所に出たらスピードをあげて運べるというわけだ。100キログラムも載せられるという。
ずいぶん前のロボットショーで、ホンダ(7267)のアシモ君やトヨタ(7203)のパートナーロボットが踊って楽器演奏してくれたなあと思い出した。
導入のしやすさ、立ち上げの速さという点では、デジタルツインという言葉もあちこちで見かけた。工場などの現実と同じ環境を再現した仮想空間でシミュレーションしてから、新たな設備の導入などをするという。現在の工場のラインをほぼ止めることなく、変更などが可能になる。オムロン(6645)では実機検証時間が65%削減できると表示してあった。シミュレーションなどはソフトが担うが、ロボットとシステムがひとつのパッケージとして顧客のもとに届くようになったということだろう。ほかにもダイフク(6383)の充電システム、THK(6481) の故障感知システムなどがみられた。
そういえば今回はAIでロボットが自ら学習して作業を覚えますよという展示がなかった。もはやAIが使われるのは当たり前になったのかもしれない。
会場が広く、とても回り切れない。コロナ禍のなかで人出はすこし少なかったかもしれないが、各社展示には力が入っていたように思う。見ているだけでわくわくした。このところの関連業種の株価は非常に厳しいが、やはり日本のロボット技術はスゴイと思った。自動化・省人化・無人化へのニーズは強いといい、「顧客の意識が一段と変わっている」との声も聞かれた。人手不足の現場もさらに多様になっている。今回私は見られなかったが、美しい盛り付けをしたり、警備をするようなサービスロボットも多数展示されたそうだ。オンライン会場は18日までだが、企業によってはデモの様子を動画で配信していたりするようなのでご興味があれば覗いてみてほしい。
(フリーアナウンサー / 証券アナリスト かのうち あやこ)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、カイカ証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。