4月3日から5日まで開催された「第3回 AI・人工知能EXPO」に行ってきた。東京オリンピック・パラリンピックのために4月から仮設開業した東京ビッグサイト・青海展示棟を使った初の催しとなる。来場者は多く、ブースのミニセミナーもたいへんな活況だった。
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説明員の方によると、企業の担当者の方々から導入についての真剣な質問があるとのことだったが、「とりあえずAIとかいうの、うちでも入れたら?」という上司の無茶振りに困っている方もあり、実際にうまく使えている企業はまだ1割程度かもしれないという印象だそうだ。
うまくいかない理由のひとつはAIを使う企画ができていないこと。何をやりたいのかわかっていないのだ。
しかし、それでもAIに頼りたいのには企業側の、変革しなければという危機感がある。もうひとつは、インフラ・システムの作り方がわからないこと。
こうした問題点に応えるべく、コンサルから構築、運営補佐まで一貫して行うことを打ち出している企業もあった。
また、AI開発の基盤を提供し、専門知識がなくてもできるようにしているところ、あるいはAI人材の教育から手がける企業なども出展していた。
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AI関連として株式市場でもおなじみのモルフォ(3653)、ALBERT(3906)、ヴィンクス(3784)、FRONTEO(2158)、オプティム(3694)などが出展。老舗ソフト関連のTIS(3626)、CTC(4739)やNTTグループなども幅広い展示を行っていた。
今回、富士ソフト(9749)ブースでは学習モデル構築や、分析結果のレポーティング・システムの開発事例などを見せていただいた。そして、私の今回の課題、エッジAIについて教えていただいた。
昨年あたりから「エッジコンピューティング」という言葉をよく聞くようになり、勉強しなくちゃいけないなと思ってはいたものの、なにしろ文系アナログ人間だ。なかなか手が出ない。
対になるのは「クラウドコンピューティング」で、私のざっくりした理解ではクラウドでデータを集約・処理するのではなく、利用者に近い場所のエッジ(辺ふち)でデータを処理することらしい。
これがAIでも同様にあるらしく「エッジAI」という言葉が展示会場でもあちこちで見られた。
そこで、そもそも「エッジAI」とはなんですか、というところから教えていただいた(こんな質問にご親切に答えていただきありがとうございます!)。
クラウドの場合、センサーなどから取得したデータ、与えられたデータをクラウドへアップロードし、クラウド上で処理してその結果を手元に戻すという手順が必要になるため、どうしても時間がかかる。
これでは自動運転に使うのには間に合わない。どうしても遅延が問題になる場合が多いのだそうだ。通信環境にも左右される。そこで手元の端末=エッジで処理をするようにしたのがエッジAIだ。
見せていただいた「箱」には、高速な判断ができるFPGAというチップが入っているそうだ。しかしFPGAは学習が苦手なので、膨大なデータを扱わなければならない学習はクラウドに任せて、そこで開発したAIを再びエッジ側におろしてくればいいわけだ。と簡単に言っているが、エッジAIとして実装するのは大変で、その技術を富士ソフトでは提案していた。
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さて、AIの利用例として紹介されていたもので興味深かったのが武蔵精密(7220)だ。
自動車部品を手がける同社はディープラーニング技術で有名なABEJAと組んで工場のAI化を進めており、昨年のAI展では自動検査機を出展していたが、今年は工場全体に拡大された感じだ。外観検査システムのほか、自動搬送車(SDV : Self Driving Vehicle)のデモを行った。
自分たちが工場で必要だったシステムは他のものづくり現場でも要るだろうという発想なのだろう。搬送や検査の部分を自動化し、コアの付加価値を生む事業に集中しよう、「人にはもっと人らしい仕事を」という理念がステージのプレゼンで語られると、珍しいことに会場から拍手がおこっていた。
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AIブームと言われるが、「人工知能」という訳のためか、万能だと思ってしまったり、人間が取って代わられる怖いものだと思ってしまったりしていて、上手に使うことはまだまだできていない。
しかし、チャットボットや業務自動化の例などを見ていると、これがAIなんて意識せずに普通になっていくのだろうなという気もする。実用化に手をかけた2019年のAI・人工知能EXPOだった。
(フリーアナウンサー/証券アナリスト かのうちあやこ)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。