かのうちあやこの「第5回ウェアラブルEXPO」レポート

 1月16~18日で開催された「第5回ウェアラブルEXPO」に行ってきた。「オートモーティブ ワールド 2019」やアジア最大級のエレクトロニクス開発・実装の展示会「ネプコン ジャパン 2019」などが併設され、特集テーマ「AI」が設定されている。

 商談・関係者のみの展示会にも関わらずたいへんな人出で、臨時受付がいくつも増設されていたのに長蛇の列ができていた。「スマート工場EXPO」が活況で、FA関連の株価は昨年から厳しい状況だが、工場の省力化ニーズは非常に高いことがうかがわれた。中小企業の方の質問や相談が増えたそうだ。また、電子部品関連でも、ローム・村田製作所ブースでは車載関連で興味深い開発品が出展されており、株価は調整したが、業界の仕事自体がなくなるわけでも、時代が逆行するわけでもないことを改めて感じた。

 このところ興味を持っている人工知能(AI)について特別講演があり、日立製作所フェロー理事の矢野和男氏のお話をうかがってきた。「AIはこの4年くらいで急に注目されているが、世の中で言われていることと実態にだいぶ差がある、ハリウッド映画に出てくるようなものではない。そもそも、人工知能やデータがなぜ必要なのかを考えてみなければならない」ということから始まった。「これまでの100年、人は厳しい肉体労働から解放されるために洗濯機などを作ってきた。これは標準化・横展開することであった。そして今はもうその段階ではない。多様化と変化が求められている」という時代認識は非常にわかりやすかった。人工知能がそのために役立つのは、実験と学習をいくらでも積み重ねられるということだろう。矢野氏は「愚直に」とおっしゃったが、人工知能はある目標を与えれば実験をし続ける。人型ロボットのようなレゴブロックがブランコの漕ぎ方を学習していく動画では、最初はやみくもに漕いでいる。というか、漕げていないのだが、だんだんと人間の子供のように、揺れの後ろで膝を曲げることを覚えていく。最初に何の知識も与えていないのに、自分でたどりつき、人間のようにブランコを漕げるようになった。しかし人工知能はここで実験をやめない。揺れの後ろで1回、前で1回膝を曲げ人間より上手に漕ぐようになる。人間はうまくいったと思うとそこで実験をやめてしまうそうだ。(身体が前方に揺れてきたときには人間は怖くて膝を曲げないということもあるが。)「ブランコの振れ幅を大きくするという目標が与えられれば、人工知能はそこに向かって愚直に実験を重ねて学習していく。」お話をうかがいながら人間は自分で壁をつくるんだろうなと思った。先入観がないというのも人工知能の特徴だが、人間の場合、これが経験として活きてくる場合もある。プラスにもマイナスにもなるということだ。しかし壁がないということは変化には向いている。これからの時代には必要だということなのだろう。

 ビジネスに活かされている例もたくさん挙げていただいた。倉庫では人間とAIが助け合い8%生産性を上げた。店舗管理ではAIと人間を競争させ、AI側が従業員がいる場所の違いで売り上げがアップするという「謎の答えを出してきて」顧客単価を15%向上させた。JPXで不正取引を見つけたり、カブコムではレンディング業務に使われたりしているそうだ。これらは日立の「多目的AI」の実績だ。AIはひとつのことをするのは得意なのだと思っていたが、先ほどのブランコに使われたAIと倉庫のAIなどはすべて同じだという。多様な業態を抱える日立ならでは、なのかもしれない。こうしてビジネスに役立つようになってきたが、AIは人間の「ハピネスのため」に役立てていくことが次の大きな展開だとのお話しであった。例えば、幸福の定義は難しいので幸福でない状態、うつ状態や病気といったものを除外することを試しているという。うつ状態の兆しなどは身体の動きに現れることが、ウェアラブル機器からとったビッグデータをAIで解析することによってわかってきたそうだ。兆候が表れた社員に声掛けをするといった対策がとれ、それによってこの対策を行ったチームの仕事の生産性があがったそうだ。生産性だけで測るのは難しいが、AIが人間の幸福に役立ったことになると言ってもいいだろう。

 もうお一人、インドのベンチャーゴーキーのトップも講演されたが、そこでも「カルマ」「善行」に結び付けたお話があった。この会社は三井物産と組んで予防医療のプラットフォームとして日本に参入するそうだ。
 AIは仕事を奪うといった否定的な見方もあり、何ができるかわからないといった不安も大きい。そんななかで、AIの大きな目的として人間の幸福といったことが考え始められているような気がした。AIに「目的」を設定する人間としても、幸福とは何かを定義しなおさなければならないのだろう。

(フリーアナウンサー/証券アナリスト かのうちあやこ)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。