かのうちあやこの「AI・人工知能EXPO2018」レポート

 今年で第2回目となったAI・人工知能EXPOに行ってきた。

 来場者5万人見込みということだったが、大変な盛況ぶりで臨時受付まで出ていた。

 入ってすぐの「モノゴコロ」のブースでは、バーチャルアイドル「IA」がライブを行っていた。集まった人々の反応をもとに話す内容が変わるそうで、私が見た時は観客の盛り上がりがいまひとつだったようで「楽しんで~」と残念そうな表情になっていた。観客数、笑顔、挙手などを検知するという。

 「オプティム」で展示されていたのはトマト収量予測。AIがトマトの画像を解析してあと何日で熟して収穫できると教えてくれる。スマート農業も注目の分野だが、これは昨年とあまり変わっていない感じだ。

 「武蔵精密工業」が出展したのは「AIを活用した自動検品装置」。これは人間にとって負担が大きく熟練の必要な作業を肩代わりしてくれる。

 昨今働き方改革で話題のRPA関連では、RPAテクノロジーズが日本生命ですでに活躍している「ロボ美ちゃん」を紹介。人間がしていた定型の業務をAIが代わってくれる。「定型」でさえあればたいていのことはこなせるという。

 SENSYのブースでは、Pepperが個人の嗜好に合ったお酒をパーソナルに提案する「SENSY ソムリエ」を体験できるほか、はるやま商事で個々人にあわせたチラシをつくった試みなどを展示していた。SENSYはパーソナルAIで、最近株式市場ではセルフレジ関連で話題のVINXが出資している。

 展示会はAIについての技術からソフトなどが一堂に会していて、ややわかりにくい面もあった。それもふまえて会場ブースでのブレインパッドの韮原氏のミニセミナーがとてもためになった。機械学習できることは過去のデータに基づいた統計であり、無から有を生み出すものではないということ。しかしこの統計をうまく使えば、小売り、医療、様々な応用ができるということだった。

 一方、特別講演で聞いたドワンゴ川上氏の講演では、まったくの無からではないものの生み出すものとしてAIがとらえられていたように思う。

 川上氏は人工知能って騒がれてるけれども結局何?という基本、学術的なところからお話があった。
(川上氏なのでもっと変則的なお話かと思っていたのでかなり意外だった)

 学術的なところ、学会の研究の動向のお話なのだが、論文数が多いのが大学ではなく企業が中心だというのが特色だろう。多額の資金を投入しているのがグーグルなどのITジャイアントなのだ。

 AIというと、どうしても人間との比較で、AIには何ができるのか。すべて人間より優れているのか。仕事を奪われてしまうのかといった話題で考えられがちだ。私も何度も驚いてしまうのだ、どうやら「AI」というのは漠然と抱いているイメージと違うようなのである。川上氏は一般に人間のほうが得意だと思っている「ひらめき」こそAIは得意だと述べておられた。芸術なんていうのは人間の専売特許だと思われがちだ。しかし、ある種のアレンジならAIにとっては簡単なタスクだそうである。グーグルが公開したコードによって、普通の猫の絵が「ゴッホ風」「ミュシャ風」になったものが紹介された。これはやはり「芸術」と呼べそうだ。ゴッホというおおもとが必要だと考えれば、本当の創作ではないと言えるが、~~風を一瞬で数多く創れるというのはAIの大きな特長とも考えられる。

 人間が考える「高度」な仕事というのが実はAIにとっては簡単で、やわらかいパンをつかむといった人間には造作もないことをロボットが苦手とするように、レジを打ちながら世間話をするといった何気ないことができなかったりする。人間にとっての仕事観が変わるかもしれない。それはもしかすると人間てなんだ、という根本的な問題になってしまうかもしれない。

 猫の絵のように、人の顔写真もAIは創ってしまえる。AIが描いた「絵」だというものを見たが、私には実在の人物の「写真」にしか見えなかった。また、文字のフォントも自動作成できる。700文字の見本があればその人の筆跡を作成できるそうだ。ということは、今行われている本人確認なんてAIは簡単に突破してしまえるだろう。セキュリティの在り方は変わる必要がありそうだ。

 ドワンゴの実験では「ニコニコ静画」に投稿されるイラストを公開する前にAIに見せたところ、閲覧数がだいたい正確に予想できたそうだ。ということは、市場に出る前にヒット商品がだいたい予測できてしまう。これはマーケティングが変わるということだ。ただしこれはデータがあれば。しかも消費者の好みなんて刻々と変わるだろうから、リアルタイムデータが必要になる。

 データ、そしてコンピューターの処理能力が「知能」を決定づけるかもしれない。なんだかそれは資金力の差になってしまいそうな気もちょっとする。

 川上氏からは、人間が働く必要がなくなり、ベーシックインカムについて考える必要が出てくる点、監視社会の到来、人間のコミュニケーションといった問題も提議された。

 人工知能をめぐる問題はまだまだわからないことが多く、難しい。しかし、時代は走り出してしまっているようである。どの企業がAIで業績があがるのかも非常に興味深いが、私たちはどうなるのか、この社会はどうなっていくのか、時々考えてみたい。

(フリーアナウンサー/証券アナリスト かのうちあやこ)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。