まもなく、12月1日から4K・8K放送が始まるということで、「インタービー(Inter BEE)」に行ってきた。「インタービー」とはプロ向け放送機器の国際展示会で、顔より大きいレンズを備えたカメラや、映像の表示技術、コンテンツなどが紹介されている。
プロ向けの放送機材といえばソニー製を良く見かける(個人的に)が、今回もカメラ、スイッチャ―、伝送システムなど幅広く網羅されていた。ブースでは440型大型スクリーンの「クリスタルLEDディスプレイ」で沖縄美ら海水族館の様子が映された。そして、美しい、あたかも目の前で見ているようなその映像を制作した方の講演があった。解像度が高い8K映像はデータ量が多く数テラバイトになるという。するとこのデータのバックアップとスケジュールが非常に問題になるそうだ。バックアップにもかなりの時間がかかる。例えば沖縄に取材に行って撮影する。ホテルに帰ってバックアップをとるが間に合うか。そしてそのホテルで電源が確保できるかというのももうひとつ現場の大きな問題なのだそうだ。ちなみに彼らは2部屋借りて電源を確保したそうだ。「このデータ量をどうマネジメントするのか」がこの4K8K時代の大きなテーマだという。
データの大きさはどこでも問題になっているようで、処理するためのモンスターコンピューターを展示したメーカーもあった。また、画像データが莫大になり、ファイルの数も膨れ上がると検索が大変になる。ただでさえ画像の検索は難しく、文字でデータを入力する必要があるがこれが手間である。しかし、映像の再利用・再配信の機会も増えており、検索の重要性は増している。そこで、自動で文字のタグをつけて検索できるようにするシステムもある。アマゾンのAWS、グーグルのブースで紹介された。ここではわざわざ「AI」と言う言葉は使っていなかったが、すでにそれは当たり前のようだ。深層学習によって人物やモノを認識してタグをつけていくのである。学習のさせ方によって、どの程度のタグをつけるかが違ってくる。そのタグのついた時間もわかるので、例えば猫が映っている映像ファイルを探し、その映像の中で何分何秒のところに猫が映っているかが一度で探し出せる。また例えばゴールの形と音と人の動きなどから大事なシーンだけを抜き出して簡単にダイジェスト映像をつくることも可能だ。これは実は「働き方改革」とも関係し業務の効率化が求められているために必要とされるらしい。
4K・8K放送はまもなく始まるのに、周知されていない、認知度が低いというのが業界の悩みのようだったが、おそらく消費者向けのテレビはこの年末商戦の目玉にすえられるだろう。東京五輪を見据え、放送業界の投資熱は高まっている。ちょうど地上デジタル放送に合わせて導入した機器が更新を迎える時期でもある。そうすればコンテンツも徐々に4K・8K対応が増えていくはずだ。この分野だけ見ても、データが増え、それを扱うコンピューターの容量は大きくなり高機能化し、CPUもGPUもメモリも必要だ。電子部品が要らなくなるなんてことなないだろうという思いを強くした。
(フリーアナウンサー/証券アナリスト かのうちあやこ)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。