かのうちあやこの「nano tech 2019」レポート

東京ビッグサイトで開かれた「nano tech 2019」に行ってきた。今年のメインテーマは「超スマート社会を実現するナノテクノロジー」だ。

ナノテクノロジー(ナノテク)とは、物質をナノメートル(1メートルの10億分の1)の大きさ、つまり原子や分子のレベルで制御、処理する技術だ。

このとんでもない小ささが様々な分野で応用されている。

ナノテク展に数年前に初めて行ったときは、「カーボンナノチューブ」ってこんなのですよ、という模型を見たり、「フラーレンってきれいな形だなー」と感心したりしていた。

身近なところではゴルフシャフトの中に入っているなど素材分野での応用が見られた。

その後、粒子が非常に小さくて困難な素材に均一に混ぜる技術や機械などの展示が見られた。

昨年は材料開発にAIを応用する「マテリアルズ・インフォマティクス」に興味を持った。

今年大賞に選ばれたのはリコーで、インクジェット技術を用いて、ロール・ツー・ロールでリチウムイオン二次電池を自由な形状で製造する技術を開発し、電池のデジタル印刷製造を大きく前進させたことが評価された。

リコーのブースでは、インクジェットで細胞数と細胞配置の精密制御を可能にする「バイオ3Dプリンター」も展示されていた。

この、細胞をきちんと数えられるというのが非常に研究上大事だそうだ。

長年培ったコア技術を応用したものは他でも見られた。

初出展の三菱鉛筆は、鉛筆やシャープペン芯の製造技術をナノテクに応用し、カーボン多孔体、カーボンセンサー材料などを作成。

磁性粉体(フェライト)の分散にも成功したという展示があったが、粒子を小さくすることで磁気特性が強くなるのだそうで、これを加工できれば次世代通信5Gなどにも使い勝手が良いという。

「カーボンナノチューブ」を研究員が発見したことで知られるNECは、量産を見据えた各種ナノカーボン技術を展示。

カーボンナノホーンを1日1kg以上生産できるのは世界初だそう。

また、量子コンピュータ関する展示も行われていた。

「量子コンピュータがなぜこんなところに出てくるのか」と思ってしまったのだが、実は量子コンピュータ開発とナノテクノロジーは切っても切れないものだそうだ。

考えてみれば量子も電子も小さいものだ。

NECでは「量子アニーリングマシン」での組み合わせ最適化の活用シーンを紹介していた。

量子コンピュータと一口に言っているが、種類がたくさんあるそうで、解説員の方にざっくり教えていただいた。

(文系の私の理解した範囲で述べるがご容赦願いたい。)広義の量子コンピュータ技術は大きく分けると量子ゲート方式とイジングマシン方式があり、前者は特定の問題の処理が極めて速くマイクロソフト、グーグル、IBMなどが研究している。

後者は国内勢が力を注いでいて、組み合わせ最適化に向いている。

そのなかでもアニーリング型、量子アニーリングを採用しているのがNECや産総研、カナダのD-Waveもこちらに入る。

富士通はアニーリング型でデジタル回路を使うタイプ。

そのマシンがパネル展示されていて(本稿の冒頭の写真)、量子コンピュータなるものを私は初めて見た!

90年代モデルだそうだが、なんとこれだけ投資テーマにもなり、話題にもしているのに実物を見たことはなく、普通のコンピュータの大きいものくらいに思っていたのだ!

写真で見るそれはなんだか深海魚のような細長い不思議な形だった。

その先端に付けられるというチップは実物を見ることができたが、これをほぼ絶対零度にまで冷やす必要があるのだとか。

実用化はまだまだ先、日本は遅れているのでは?と思われている量子コンピュータ技術だが、NECでは2023年ごろをめどにマシンを開発しているそうで、意外と歩みは速いのかもしれない。

昨年秋のシーテックで見た富士通の「デジタルアニーラ」もある。

D-Waveが発表した時も専門家の間から本物かどうか疑問の声があがったそうだが、実際に計算ができ、スーパーコンピューターをしのぐ問題解決能力を持つのであれば、物流・交通の最適化で渋滞をなくす、電力・通信の最適化でインフラを安定供給する、投資ポートフォリオを最適化するなどなど、様々な分野に活用されていくだろう。

(フリーアナウンサー/証券アナリスト かのうちあやこ)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。