ワクチン接種進展を好感する動きが顕著に
5月28日に公開された記事「ここから示現しそうな3つのストーリーから銘柄選択」で、日本における新型コロナウイルスのワクチン接種はスピードアップし、思いのほか早い経済活動再開が見通せることになるとして以下の9銘柄を取り上げた。公開当日終値とその後の高値の比較をまず見ていただきたい。
【株価持ち直し期待/半導体製造装置】
- 東京エレクトロン(8035) 48,290円→50,110円(6/18)
- SCREENホールディングス(7735) 10,330円→11,060(6/25)
- レーザーテック(6920) 19,460円→23,930円(6/7)
【一段高期待/電機・自動車】
- 日立製作所(6501) 5,816円→6,525円(6/28)
- 富士通(6702) 17,955円→20,770円(6/29)
- トヨタ自動車(7203) 9,135円→10,330円(6/16)
- いすゞ自動車(7202) 1,492円→1,601円(6/10)
【経済活動再開先取り期待/陸運】
- JR東海(9022) 16,495円→18,455円(6/10)
- JR東日本(9020) 7,985円→8,569円(6/10)
ちなみに日経平均株価は5月28日終値29,149円41銭、その後6月15日に高値29,441円30銭があるものの、その後は弱含みの推移をしている。その中にあって、これらが買われたことになる。株価は半年から一年程度先取りして動くと言われるが、この9銘柄の動きが一年後の日本の様子を映していると考えることもできなくない。もちろんキーワードは「経済活動再開」だ。ワクチン接種は止まることがなく、当初想定されていなかった「職域接種」もスタートしている。職域接種は役職員だけでなく、その家族や、子会社、取引先まで含まれるものだ。年齢の区別なく希望者を募ることから、これまで考えられていた、高齢者から若年層へという流れに新風を吹き込むものとなっている。全世代同時進行で接種は進む。
高齢者をけん引役として個人消費は本格回復局面に
先行してワクチンを接種した65歳以上の高齢者の行動にはすでに変化が表れている。6月29日大手紙に「新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、高齢者の人出が増えてきた」という記事があった。記事では「ワクチンの効果が高まる2回目の接種後は高齢者の人出が一段と増すとみられ、個人消費の高まりをにらむ旅行や小売り各社は需要の取り込みに力を入れ始めた」ともされている。NTTドコモの携帯電話の位置情報データでは、6月最後の土日(6月26-27日)の東京・銀座の午後3時台の人出は、60-70代が5月最後の土日(5月29-30日)と比べ39%増加し、この伸び率は他のいずれの年代(10~50代)と比べても高く、特に70代は45%増と大きく伸びたとのことだ。高齢者がけん引する格好で、国内の人の動きは活発化すると考えることができそうだ。半面、人の動きが活発化することでコロナ感染が再拡大し、医療体制の逼迫につながるのではとの懸念があるのも事実だ。昨年春からここまで感染再拡大を何度も繰り返してきた経緯がある。ただ、これも現行ワクチンの効果を勘案すると、過去ほど恐れるものではないと(とくにワクチン接種を終えた人は)考えることになるだろう。ここから先は、国内の動き=個人消費に注目が移るだろう。日本のワクチン接種は欧米に比べスタートが遅れたものの、接種ペースは欧米を凌駕するほどで、このペースで進めば7月に接種率30%、そのまま順調に推移すると9 月に同50%を超える可能性があると見る。欧米の例を参考にすると、接種率が30%を超えた月にサービス業PMI(購買担当者景気指数/企業購買担当者の景況感を集計した景気指標)が上方に大きく浮上している。日本では7月23日に東京オリンピックが開幕するが、オリンピックの熱狂の中で、個人消費が大きく回復していくシナリオがにわかに現実味を帯びてきた。
【個人消費に関連し注目される銘柄の例】

ニトリホールディングス(9843・東証1部)

良品計画(7453・東証1部)

三越伊勢丹ホールディングス(3099・東証1部)

カカクコム(2371・東証1部)

(株式ジャーナリスト 天海 源一郎)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。