アップル下落が与えた逆資産効果は甚大

 新年早々、アップルショックで幕を開けた株式市場であったが、NYダウは1月3日の下落分(660.02ドル)を、その後の5日連騰で“倍返し”(1,315.7ドル)することとなり、上昇過程に回帰しているが、アップルの株価自体は指数などとの相対比較で戻っている訳ではないことに注意が必要であると考えている。

 今回の騒動を纏めてみると、ことの発端は、ティム・クックCEOが1月2日に公開した投資家向けの書簡で業績見通しの下方修正が明らかにしたことにある。その中で、2018年10~12月期の売上高を840億ドル(約9兆円)と示したが、これは当初予想よりも5~10%程度低いものであり、前年同期比では16年7~9月期以来の減収となるショッキングなものであった。そして、その理由として挙げたのが、中国でのiPhoneの販売不振及びグローバル経済を取り巻く悪化懸念であった。
 ドル円相場も大きくこの下方修正に反応し、(日本市場は休場であったが)フラッシュ・クラッシュ的な円高が進行し、一時104.70円レベルにまで円は上昇することとなった。

 上のグラフは、米国主要3指数とアップル株の値動きを、NASDAQが最後に終値ベースの史上最高値をつけた昨年8月29日を100として辿ったものであるが、その後、ダウが最後に史上最高値を更新した昨年10月3日に同じくアップル株は最高値を更新し、10月末までは相対的に最も高いパフォーマンスであったものが、その後、大きく下落していることが分かる。
 一番右の大きな囲みは、ヘッジファンドの決算期の解約による売却を終え、新規にファンドに流入した資金による購入が活発となるイースター明けの上昇期であるが、その後は、再度、低迷期に入っている。これは、米国自身も含んだティム・クックCEOの言うところの“景気減速”が新たな市場のテーマとなったことが要因であろう。

 グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムをして、「GAFA」というグループ名で呼ばれているが、これは以前、マイクロソフトも加えて「GAFMA」と呼ばれていたのだが、同社は個人情報をベースとして売上を増加させるというビジネスモデルではないとの理由から外され、現在の「GAFA」に落ち着いたという経緯がある。

 これらの個別株とNASDAQの推移を表したこのグラフを見ると、“外された”マイクロソフトのパフォーマンスが相対的に優れていることが分かる。
 これは、グループから外れたため、ファンドや投信における組入れが、他の「GAFA」銘柄よりも小さくなっていたことが、これらのファンドや投信の解約や売却時に、値持ちの良さに繋がったと考えることができる。
 事実、1月3日のアップルショックの日に、アップルは1日にして時価総額を761億ドル程度減少させ、6747億ドルとなり、トップから一気に4位に落ち込んだが、代わってトップに立ったのがマイクロソフトである。

 ここで、このアップルの時価総額の減少が意味する“逆資産効果”の大きさを考えてみる。
 昨年、「時価総額1兆ドル突破」で話題となったアップルの時価総額は、10月3日時点で約1兆1,000億ドルにまで増加し、現在(1月18日)はそれより約3,600億ドル減少した水準となっている。減少率は32.4%と、ほぼ三分の一を失った計算である。

 この金額を、イメージを掴み易くするために1ドル108円で換算し、統計上公表されている(直近値である)2017年の米国の人口で割ると、一人あたり約12万円と同社の最も価格の高いスマホほどにもなる。無論、同社の株主は米国民だけではないため、乱暴な試算ではあるが、アップルの第2位の株主が、ウォーレン・バフェットが率いる米国長期投資の精神的な柱とも言えるバークシャー・ハサウェイであることからも、米国民の逆資産効果という傷の深さは甚大である。

 これは、対ダウ、対マイクロソフトのアップルの累計パフォーマンスの推移である。
 直近、指数は上場しているが、かつてのようにアップルがけん引する形での上昇ではないことがこのグラフから判断される。かつてのような輝きを持ってアップルが相場をけん引する日が来るのか。それを期待するには、あまりにも失った時価総額は大きいと、現状言わざるを得ない。

(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。