インフレ率の急上昇で英中銀は利上げに動くか?

英中銀のスタンスが変わった?

10月25日、イングランド銀行のカーニー総裁は英国議会の貴族院(House of Lords)の経済問題委員会(Economic Affairs Committee)で証言し、英国のインフレーションがオーバーシュートするのを許容するにも限度があるとしました。英国ではブレグジット後に進行した英ポンド安に加えて、原油価格などコモディティ価格が値を戻しつつあることなどを背景に、消費者物価指数で計測されるインフレ率が著しく上昇しています。11月2日と3日に開催される英中銀の金融政策委員会(Monetary Policy Committee)は注目ですが、今回はさらに3日に発表される四半期毎のインフレーション・レポートの内容にも注目です。

英国のインフレ率は来年+2.0%に到達?

10月に発表された9月の英国消費者物価指数(前年同月比)は+1.0%であり、市場予想の+0.9%を上回りました。9月の上昇の要因としては衣料品の寄与が一番大きかったようです。他にはレストランやホテルなどの寄与も大きくなっています。8月は+0.6%でしたので英国で急速にインフレーションが進行している可能性が考えられます。来年には前年同月比で+2.0%に到達する可能性も出てきました。

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インフレ率上昇の背景にポンド安

英ポンドは年始から下落傾向にありますが6月のブレグジット以降、一段安となっています。特に最近では英国が欧州単一市場へのアクセスを失う、いわゆるハード・ブレグジットの懸念が高まっているため、英ポンドを売る動きが強まっていると考えられます。経済的利益は残したまま移民受入を拒否してEUから離脱しようとしている英国に対して、EUはその結束を強めるため、離脱した者が得をするオイシイ状況にすることはないと思われます。英国はブレグジットという道を選択したことにより、ある種の経済制裁を受けるのと同様な経済的ダメージを受けることになり、英ポンド安がさらに下落する可能性も否定できません。

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ポンド安は輸入品の価格を押し上げることになるので、消費者物価指数の急上昇の一因になっているものと考えられます。さらに原油先物価格が50ドル近辺まで戻してきていることや、鉱物資源の生産調整が世界的に進んできていることによって、コモディティ価格が底打ちしてきたことも背景にあるかもしれません。

今後のシナリオ

25日のカーニー総裁の証言により、英国におけるインフレーションの進行とイングランド銀行の動向がよりいっそう今後の市場の注目点となる可能性が出てきました。11月2日と3日に開催される英中銀の金融政策委員会(MPC)では経済の下支えのための利下げを予想する向きもありましたが、先週発表された7-9月期の英国GDP速報値は前期比+0.5%と市場予想を上回ったことで利下げの可能性は低下したと考えられます。むしろ、インフレ率の上昇により、イングランド銀行は利下げよりも利上げを検討しているかもしれません。3日の金融政策委員会では現状維持が予想されますが、11月3日に発表される四半期毎のインフレーション・レポートの内容に注目したいところです。来年インフレ率が+2.0%を超えてきた場合に、イングランド銀行は利上げを積極的に行うかどうかがポイントとなるでしょう。仮にイングランド銀行が利上げに積極的な姿勢を見せれば英ポンド相場は一時的に急騰する可能性がありますが、相場が上昇したところでハード・ブレグジット懸念により売られることになり、英ポンド相場の変動は大きくなるものと考えられます。一方で、利上げに積極的な姿勢を見せなければポンド安がいっそう進む可能性があるでしょう。

英ポンド相場の急変を予想するならeワラントを両建てする

相場が大きく動くことを想定する場合は、相場の方向性を予想するよりも、ボラティリティの拡大を期待してコール型eワラントとプット型eワラントを両方とも購入する両建て戦略が有効となることがあります。極端な例で言えば、仮に片方の価格がゼロになったとしても、もう片方が2倍以上になれば合計でプラスとなることが期待できるからです。eワラントの最大損失は購入金額までに限定されておりながら、最大リターンには上限がないからこそできる、eワラントならではの投資戦術です(ただし、プット型eワラントにはリターン上限があります)。

両建て戦略において選択するeワラントはコール型もプット型も満期日が同じで、かつ、なるべく満期日までの残存期間が短いもの、権利行使価格はなるべく現在の相場水準に近いものを選びます。日経平均株価や米ドルを対象とするeワラントは銘柄数も多いので条件に合う銘柄が見つかるかもしれませんが、英ポンドを対象とする銘柄は条件に合う銘柄が見つからないかもしれません。この場合は、コール型は権利行使価格が相場水準よりもやや上、プット型は権利行使価格が相場水準よりもやや下の銘柄を選ぶとよいでしょう。

具体例(英ポンド対円相場が126円付近の場合)

大きな変動を見込むなら

英ポンド コール型317回(権利行使価格126 円、満期日2016年12 月14日)

英ポンド プット型289回(権利行使価格126 円、満期日2016年12 月14日)

より大きな変動を見込むなら

英ポンド コール型 320 回(権利行使価格132 円、満期日2016年12 月14日)

英ポンド プット型 286 回(権利行使価格120 円、満期日2016年12 月14日)

英ポンド相場の下落のみを想定するなら

英ポンド プット型273回(権利行使価格168円、満期日2016年12 月14日)

英ポンド プット型273回は権利行使価格が相場水準よりはるかに高いプット型eワラントです。このような状態の銘柄はレバレッジ水準が低いので両建て戦略には向いていませんが、時間経過によるeワラントの目減りの影響が小さいので利食い売りや損切りの売りが苦手な方で、英ポンド相場の下落を見込むのであればこの銘柄を満期日まで保有するのも一手でしょう。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。