イールドカーブがスティープ化!株価への影響は?

米国の長期金利や短期金利には多くの市場関係者が注目しています。長短金利の状況はイールドカーブに見られますが、経済動向によって変化するイールドカーブには投資家心理があらわれているとも考えられます。そのイールドカーブについてですが、直近の大きなニュースによって、米国のイールドカーブにやや変調が見られます。そこで本稿では直近の米国のイールドカーブの状況について確認するとともに、今後の投資戦略について考えてみました。


米国債のイールドカーブはスティープ化

図1は米国債のイールドカーブです。イールドカーブとは米国債の各年限の利回りを線で結んだものです。例えば図1の赤色の線は、2020年11月10日時点で満期まで残り1カ月の国債の利回りが約0.01%、残り1年の国債の利回りが約0.12%、残り5年の国債の利回りが約0.45%、残り10年の国債の利回りが約0.96%となっている利回りを結んだものです。通常、イールドカーブは国債の残存期間が長くなるほど利回りは上昇する傾向にあるので右肩上がりの形状をしています。


イールドカーブを見る上で重要なポイントは、イールドカーブの形状が経済動向に応じて変化することです。長期金利が短期金利に比べて大幅に高い状況では、イールドカーブの傾きが急となり(スティープ化)、逆に長期金利と短期金利の差が縮小する状況ではイールドカーブの傾きは緩やかになります(フラット化)。また、ごく稀に短期金利が長期金利を上回り、右肩下がりのイールドカーブとなることもあります。いわゆる「逆イールド」と呼ばれる現象です。

国債の利回りは、国債が値下がりすると上昇し、国債が値上がりすると低下する関係にあります。一般的に、米国景気の先行きに楽観的な投資家が増えると、保有する長期国債を売却して株式を買う動きが出てくるので、国債の売却によって10年あたりの長期ゾーンを中心に利回りが上昇すると考えられます。短期金利に変化がなければイールドカーブがスティープ化することになります。逆に米国景気の先行きに悲観的な投資家が増えると、保有する株式を売却して長期国債を買う動きが出てくるので、国債の買付により10年あたりの長期ゾーンを中心に利回りが低下すると考えられます。短期金利に変化がなければイールドカーブがフラット化することになります。

図1では6カ月前からのイールドカーブの変化を見ることができますが、5年以上の長期ゾーンで1カ月前頃から利回りが上昇し、直近は上昇幅をさらに拡大しています。一方、2年以下の短期ゾーンでは一貫して利回りが低い水準に抑えられており、米国債のイールドカーブは徐々にスティープ化していることが分かります。米国債のイールドカーブがスティープ化している要因としては以下の要因が考えられます。

  • FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策で短期の利回りが低水準に抑えられている
  • 大統領選という大イベント通過でリスクオンの債券売り・株式買いが発生
  • 民主党政権誕生による米国財政の悪化懸念(国債増発懸念)
  • 新型コロナワクチン開発に関するニュースによる将来の景気回復期待の高まり


長短スプレッドは拡大傾向

図2は残存10年の米国債利回りを長期金利、残存2年の米国債の利回りを短期金利として、その長期金利と短期金利の差(以下「長短スプレッド」といいます)の推移を見たものです。


図上には表れていませんが、2019年8月には長期金利と短期金利が逆転する「逆イールド」が発生しています。米国では過去に「逆イールド」が発生した後しばらくしてから株価がピークをつける傾向がありましたが、今回も「逆イールド」の発生後に株価が大きく下落しました(2020年3月)。一方、株価が底打ちをし、長短スプレッドが拡大する過程においては、株価は比較的堅調に推移する傾向が見られます。図3は長短スプレッドとNYダウ平均の推移を比較したものです。


長短スプレッドの見通しと投資戦略

2020年9月のFOMC(連邦公開市場委員会)でFRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで維持するとの方針を明らかにしています。短期の金利については長期的に低位安定するものと考えられます。

一方で、新型コロナワクチンの開発は世界中で行われており、時期は不明ながらも早晩ウイルスを克服し、再び経済の成長期待は高まるものと思われます。したがって長期金利は今後も上昇が続くと考えられます。とはいえ、拙速な金利上昇は株から債券への資金再流入を生じさせかねないため、FRBも何かしらの手を打ってくると考えられます。日本銀行が導入しているYCC(イールドカーブ・コントロール)がその方策の一つとなるかもしれません。

以上を踏まえると、長短スプレッドは緩やかながら今後も拡大していく可能性が高いと考えられます。株価はコロナショックで大きな調整を経たうえで、長短スプレッドが拡大していくようであれば、既に大きく上昇していて警戒感もある株式相場ですが、今後も緩やかな上昇基調が続くかもしれません。このシナリオを前提とする場合、日経平均コールのうち、満期までの期間が長く、権利行使価格が低い銘柄を選択するのも一案です。また、野村NYダウETFや日経平均を対象とするプラス5倍トラッカーを買い付けておくのも一手です。これらの銘柄は時間的価値の減少の影響が小さい(プラス5倍トラッカーの場合は影響がない)ので、中長期的な投資に向いた銘柄と考えられます。


(eワラント証券 多田幸大)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。