第5回も読んでいただき有難うございます!
それでは、第4回の最後に出題した問題の解説から始めたいと思います。
トヨタ自動車1株の株価:7,000円 【8月30日(金)の引値】
トヨタ自動車のコールオプション,プットオプションの価格:150円
【満期:1カ月,権利行使価格:7,000円,デルタ:50%,ガンマ:0.00057,ベガ:15円,シータ:4円】
※オプション1単位あたり、原資産1株に相当するものとします。
Q:9月2日(月)にトヨタ自動車の株価が、6,900円に下落し、オプション価格を計算する際のボラティリティが1%上昇した場合、上記のコールオプション、プットオプションはそれぞれいくらになるでしょうか?
A:さあ、本当に総復習問題となってきましたね。
第4回の冒頭で解説した内容と、価格、デルタ、ガンマ、ベガなどの数字は同じものを使っているのでそこまでは省略しますね。
(コール)
価格(デルタ、ガンマ、ベガ)=117.85円
(プット)
価格(デルタ、ガンマ、ベガ)=217.85円
でした。
これらの値から、時間経過としてのシータの4円を引けば良いんだから・・・、と考えた方!
ちょっと待ったー!
本当に4円だけで良いんですか!?
8月30日(金)から9月2日(月)になったわけですから、確かに営業日ベースで言えば、1日しか経っていません。
しかし、オプションの世界においては営業日ではなく、カレンダーベースの日数で計算するんです!
従って、金曜から月曜になると、3日分のシータが落ちることになるんですよね。
3日分ですから、4円×3日=12円となります。A
つまり、最終的な答えは、
(コール)
価格(デルタ、ガンマ、ベガ、シータ)=117.85円-12円=105.85円
(プット)
価格(デルタ、ガンマ、ベガ、シータ)=217.85円-12円=205.85円
となります。
今回は、通常の週末を想定しましたので3日分で済みましたが、これがゴールデンウイーク前や年末だった場合は、更に日数が多いわけですから、オプションの買い手にとったらシータ的に不利ということになりますね。B 覚えておきましょう!
ガンマトレーディングって?
さあ、前回までで一通りギリシャ文字の説明は終わったので、今回からはそのギリシャ文字を使ったトレーディング手法の紹介をしていきましょう。
まずは、これぞオプション取引と言うべき、ガンマトレーディングについて解説していきたい思います。
ガンマトレーディング?
ガンマってあのめちゃくちゃ小さい数字のやつでしょ?
あの数字を取引したからって儲かるの?
そんなに変動するの?
どうやって取引するの?
はい、まったくその通りですよね。
僕も、最初はそうだったので、安心してください。
では、まず解説を分かりやすくするために、図を作ってみましたので、下図を見てください。
青色の実線がコールの価格曲線を表しています。
そして赤色の実線は、そのコールの満期時点のペイオフを表しています。
ここで復習です。
コールオプションを買った場合と、株を買った場合とで、その損益に関して決定的に異なる点は何だったでしょうか?
お分かりですよね?
下図のコール価格のように、オプションは曲線です。しかし株は直線です。
では、デルタという言葉を使うならば、どのように説明ができるでしょうか?
デルタとは、原資産の変動に対する、コール価格の変動の割合でしたから・・・数学の時間で習いましたよね?デルタとは、青の曲線に対してひいた接線の傾きになります。それを青色の点線で表してあります。

今、3本だけ接線を引いてありますが、原資産価格が上昇するにつれて、その傾きが大きくなっているのが分かりますよね?
つまり原資産価格の上昇に伴いデルタが大きくなっている、変化しているということです。
これが直線の世界にはない、曲線の世界の特徴となります。
そして余談ですが、この値が0~1の間を動くんでしたよね?図で確認してみてください。
原資産価格が安くなればなるほど、接線の傾きはゼロに近づきますし、原資産価格が高くなればなるほど、赤色の満期曲線の傾き、つまり45度線(傾きが1を意味します。)に近づいていきます。
既に学習した、“デルタの動く範囲”の定義と一致してますよね!?
さて、ここまで理解すれば、あと少しです!
このデルタが変わるということ、を取引してあげればいいのです。
どうやるの・・・?
勘の鋭い方なら、お分かりかもしれませんね。それはまた次回にお話したいと思います。
デルタはオプションカーブの接線の傾きだ!とだけ覚えておいてくださいね。
(eワラント証券)
※A ここでは話を単純にするために、日々のシータの値は一定と考えています。実際は、一定ではありません。
※B 現実には、週末や連休中に大きく動くケースも多々ありますので、一概に買い手不利とは言えません。
* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。