ゴルディロックスが持つ“もう1つの”意味

 年初、今年の米国株式相場について、私は「子供の大統領に大人の対応をする株式市場」と予想したが、果たしてそのままの状況で年を越しそうである。 これは、恐怖指数ことVIXの年間平均値とダウの終値が前日のそれから1%以上動いた日数が全営業日に占める比率を示したものであるが、今年は過去最低のボラティリティで“静かに”上昇したことが分かる。前日比で1%動いた比率が4.1%ということは、平均的な1か月の営業日数を上回る25営業日に1日しか、それが示現しなかったことになる。

 ここに、各国株式指数が直近で年初来高値をとった日を列挙すると、近い方から、ロンドンFTSE100が昨日の12/21、ダウ、ナスダック、S&P500の米国3指数が12/18、日経平均が12/11、香港ハンセンが11/22、上海総合が11/13、韓国KOSPI、ドイツDAX、フランスCAC40が11/3、ロシアRTSが1/27となっており、11月の初旬にかけて世界的に株式市場が上昇した後に、再度、高値を奪回したのが、日米英の3ヶ国の指数だけである。

 一方で、この3ヶ国の指数の今年の上昇率を列挙すると、ロンドンFTSE100は6.5%でしかなく、ダウの25.4%、ナスダックの29.4%、S&P500の19.9%、日経平均の19.6%(いずれも昨日時点)よりも大きく劣ることから、年間を通して高い上昇率となり、且つ、12月になってもその勢いに衰えがなかったのは、日本と米国の両市場のみであったことが窺える。

 この両市場の強さの要因であるが、日本市場については、日銀の年間ETF購入枠が6兆円となったことが大きく下支え効果として働いた“官製相場”と、200兆円を超える資産を誇る「ゆうちょ銀行」が株式への資金シフトを行うのではないかという期待が背景にあることを、10月の寄稿において述べたが、米国市場においては、ファンドを通じた資金の流入が続いていることを挙げたい。

 「1年のうち、米国株式市場において最も出来高が膨らむ日はいつか?」との問いに、「3月、6月、9月、12月のメジャーSQ日」と答えることは簡単であろう。それでは、次に膨らむ日はいつかというと、それは月末の営業日である。そして、2015年以降は、11月末日の出来高が膨らむ傾向が顕著となっている。

 11月は、ヘッジファンドの決算が集中する月である。私自身が運用していたファンドもそうであったが、ファンドの解約や新たな資金の流入は、3ヶ月に一度、半年に一度、ファンドによっては決算月の年に一度というように限られている場合が多い。

 言い換えれば、解約と資金流入というネットの資金フローが11月の月末リバランスに影響を与えることが多いのである。今年の11月末日に、大きな材料が出たわけではないが、ダウは今年2番目に高い上昇率を記録した。このことは、ファンドの資金フローが「流入」であったことを啓示してはいないだろうか。

 これらの要因により、日米ともにまだまだ堅調な地合いは続くことを予想している。日経平均については、他国との相対的なPER比較、全米PERとのギャップ推計から、PERが15.5倍の水準である、2万3,600円までの上昇は、遠くない日に実現するのではないかというのが、現在のストラテジーである。

 現在の市場は「ゴルディロックス相場」と呼ばれている。
“ちょうど良い”とか“comfortable”という意味合いをもって市場で使われている感のある「ゴルディロックス」であるが、15年ほど前、外資系投資顧問に所属していた際に外国人がこの言葉を使うときは、他の意味も暗に含んでいたように思う。

 「ゴルディロックスと3匹の熊」という英国の物語は、主人公の女の子(彼女こそがゴルディロックス)が、森の熊の家に忍び込み、キッチンで熱すぎるスープ、冷たすぎるスープ、そして、ちょうど良い温度のスープを見つけて、“ちょうど良い”スープを飲むという、物語の最初の部分のみを市場は用いていると言えるが、実は、この物語には続きがある。

 2つ目の部屋で大きすぎる椅子とちょうど良い大きさの椅子があり、ちょうど良い椅子に座ったところ、すぐに壊れてしまい、奥の部屋にあったちょうど良いベッドを見つけて横たわったら深い眠りについてしまい、目を覚ましたら3匹の熊が居たという怖い結末なのである。
 後半の物語が教えることは、ちょうど良い時間は短く(椅子が壊れる)、それに気づかないと最後に怖い目に遭うということだ。また、ゴルディロックスは最初に熱いスープがあった時点で、それほど熊は遠くに行っていないと考えるべきであったということなのである。

「北朝鮮リスク」、「欧州の選挙」、「ビットコインの過熱」・・・。
ユーフォリア的な雰囲気の漂う今こそ、「熱いスープ」に該当するものがないか、見渡して考えるべきなのかもしれない。

(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。