新型コロナワクチン接種のスピードが上がったこともあり、第4波の流行は着実に落ち着きを取り戻し始めました。
この流れが続けば大都市圏に出されている緊急事態宣言の解除も近い事でしょう。
今回はワクチン接種が広がっているため、宣言解除後に再度、人の移動が増えたとしても、第5波は起きないかもしれません。
その前提に立つのであれば、足元の株価はもっと上昇し、高値を更新する展開になってもおかしくないのではないでしょうか?
しかし、世界の主要株価指数の値動きは、足元では踊り場相場の展開となっております。
私はこの背景として、米シカゴ・オプション取引所(CBOE)においてスキュー指数が高値を更新し続け、6月11日の引値ベースで最高値の159.28ポイントまで上昇していることが影響していると思っております。
そこで今回は、今年の2月2日にeワラントジャーナルにて掲載させていただきました「スキュー指数って何?これを知れば、あなたも相場下落の予兆が分かる!?」という記事に続いて、最近のスキュー指数の動きについて解説したいと思います。
スキュー指数とは?
まずは前回の記事をお読みいただいていない方向けに、「スキュー指数」についておさらいをしたいと思います。
スキュー指数とは、米シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P500指数を対象とするオプション取引から、毎日独自のルールで計算されたスキューを指数化し、スキュー指数として日々公表しているものになります。
では、スキューとはそもそも何なのか?日本語の直訳では、「歪み(ゆがみ)」と言ったりします。
オプション市場を語る上で、何と言っても欠かせないのが、ボラティリティになりますが、そのボラティリティを語る上で欠かせないのが、ボラティリティスキューになります。
ボラティリティスキューとは?
オプション価格の計算に欠かせないのが、ボラティリティの値になりますが、その値は原資産が同じであれば全て同じ値なのでしょうか?
答えは、ノーです。
権利行使価格、満期日によってオプション価格に織り込まれているボラティリティの値は異なっているのが通常です。
満期日に関しては、今回の議論の対象外として、権利行使価格ごとにボラティリティが異なるとは、どういうことなのでしょうか?
それを簡単に表したイメージ図が下図になります。

権利行使価格ごとに、ボラティリティが異なるのがお分かりでしょうか?
これを(ボラティリティ)スキューと呼びます。
一般的に、現値よりも下側の権利行使価格(ダウンサイド)ではボラティリティが高く値付けされています。実際に相場が下落した際には、ボラティリティが高くなっていることが予想されるためです。
一方、現値よりも上側の権利行使価格(アップサイド)では、そこまでボラティリティは高くありません。相場が上昇する場合、一般的には、緩やかに上昇していくことが見込まれるためです。
つまり、スキューは、ダウンサイドのボラティリティがアップサイドのボラティリティに比べてどれくらい高いか?を表した数値だと定義できるでしょう。
スキューが高いということは、ダウンサイドのボラティリティが上昇していることを意味し、言い換えるならば、市場では将来の相場下落に備え、アウトオブザマネーのプットオプションへの需要が高まっているとも言えるでしょう。
スキュー指数が最高値?
それでは本題に入っていきたいのですが、そのスキュー指数が先週末に最高値の159.28ポイントを記録しました。
下の図1をご覧ください。
2000年からの約20年間のスキュー指数とVIX指数の推移を表したものになります。

2008年に起きたリーマンショックのケースと2020年に起きた新型コロナウィルスショックのケースを見比べてみると、VIX指数の水準はほぼ同レベルであるのに比べて、スキュー指数においては全く様相が異なることが分かります。
今回の新型コロナウィルスショックにおいては、VIX指数の水準が平常時レベルに戻った後もスキュー指数が下がらずに、高値を更新してきています。
では、次に下の図2をご覧ください。
今度は2019年からの約2年間のスキュー指数、VIX指数、S&P500株価指数の推移を表したものになります。

ご覧のように、スキュー指数は110ポイント~140ポイントの範囲で推移するのが通常であることが分かります。
一方で、140ポイントを超えるタイミングが1年に1回から数回程度の頻度で稀に起こることも見て取れます。
そしてもう一つ重要なポイントとして、スキュー指数が140ポイントを超えてきた直後にVIX指数の上昇が遅れてやってくる傾向がある、ということです。
つまり、相場がクラッシュする時は、いきなり起こるのではなく、その裏ではスキューが上昇することから始まっていることがあるということです。徐々にプットオプションを買って保険をかける投資家が増えてくる→その結果、スキューが上昇する→その後、相場が急落する、というサイクルになりがちなのです。
そしていつの日か張りつめていた糸が突然切れるように、クラッシュ相場へと繋がるのです。
そのような特性をもっているスキュー指数が、足元なんと160ポイント台の一歩手前まで上昇しています。
これは、ダウンサイドのプットオプションを高いボラティリティを払っても良いから欲しいと考え、買っている投資家が大勢いることの表れと捉えて良いかもしれません。
では何故このタイミングで相場の急落リスクを想定しているのか?
新型コロナウィルスショックが落ち着きを取り戻し、今から世界経済が元の状態に戻ろうとしているこのタイミングで・・・
答えは誰もわかりません。 行き過ぎた金融緩和マネーによって吊り上げられた株価水準が高過ぎると考えられているのか、あるいはVIXの水準(ボラティリティ)が十分安くなったので、スキューは高いものの、以前よりは割安にダウンサイドのプットオプションを買えるようになったためなのか。
色々と憶測は飛び交いますが、近年で「最高値のスキュー値」であることだけは紛れもない事実になります。
クラッシュ相場に備えても良いかもしれません。
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(eワラント証券)
* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。