年初から絶好調だった株式市場ですが、ここ数日は大幅下落が続くなど、若干荒い展開が続いています。
その証拠に、別名「恐怖指数」と呼ばれるアメリカのVIX指数は、33.09ポイントとなり、昨年の10月以来の水準となってきております。

VIX指数に関しては、私も今まで何度か記事を書かせていただいておりましたが(以下、参照)、今回はその水準をどうこうお話しするつもりはございません。
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皆さんは、スキューという言葉をご存じでしょうか?日本語の直訳では、「歪み(ゆがみ)」と言ったりします。
オプション市場を語る上で、何と言っても欠かせないのが、ボラティリティになりますが、そのボラティリティを語る上で欠かせないのが、ボラティリティスキューになります。
そして、このスキューの水準に注目すれば、将来のVIX指数の動き、ひいては相場全体の動きが読めるのではないか?という点に今回は主眼を置いて、解説させていただければと思います。
ボラティリティスキューとは?
オプション価格の計算に欠かせないのが、ボラティリティの値になりますが、その値は原資産が同じであれば全て同じ値なのでしょうか?
答えは、ノーです。
権利行使価格、満期日によってオプション価格に織り込まれているボラティリティの値は異なっているのが通常です。
満期日に関しては、今回の議論の対象外として、権利行使価格ごとにボラティリティが異なるとは、どういうことなのでしょうか?
それを簡単に表したイメージ図が下図になります。

権利行使価格ごとに、ボラティリティが異なるのがお分かりでしょうか?
これを(ボラティリティ)スキューと呼びます。
一般的に、現値よりも下側の権利行使価格ではボラティリティが高く値付けされています。実際に相場が下落した際には、ボラティリティが高くなっていることが予想されるためです。 一般的に、現値よりも下側の権利行使価格ではボラティリティが高く値付けされています。実際に相場が下落した際には、ボラティリティが高くなっていることが予想されるためです。
一方、現値よりも上側の権利行使価格では、そこまでボラティリティは高くありません。相場が上昇する場合、一般的には、緩やかに上昇していくことが見込まれるためです。
つまり、スキューは、ダウンサイドのボラティリティがアップサイドのボラティリティに比べてどれくらい高いか?を表した数値だと定義できるでしょう。
スキューが高いということは、ダウンサイドのボラティリティが上昇していることを意味し、言い換えるならば、市場では将来の相場下落に備え、アウトオブザマネーのプットオプションへの需要が高まっているとも言えるでしょう。
スキュー指数とは?
それでは本題に入っていきたいのですが、米シカゴ・オプション取引所(CBOE)では、S&P500指数を対象とするオプション取引から、毎日独自のルールで計算されたスキューを指数化し、スキュー指数として日々公表されているのをご存じでしょうか?
先程のVIX指数のグラフにそのスキュー指数を追加したものが、下図になります。

注目していただきたいのは、赤丸で囲った部分です。
スキュー指数は、先ほど申し上げたように、一般的にはダウンサイドのボラティリティの方が高いために、100を超える水準で推移します。
その中でも稀に、140ポイント超える局面が1年に数度現れることがあります。
今後、その際は注意していただければと思います。
図から分かるように、スキュー指数が140ポイントを超えてきた直後にVIX指数の上昇が遅れてやってくる傾向があるのです。
つまり、相場がクラッシュする時は、いきなり起こるのではなく、その裏ではスキューが上昇することから始まっていることがあるということです。徐々にプットオプションを買って保険をかける投資家が増えてくる→その結果、スキューが上昇する→その後、相場が急落する、というサイクルになりがちなのです。
足元の調整局面も同じことが言えました。年末年始に株式市場は高値更新で絶好調状態でした。
しかし、実はその裏では、スキューがじわりじわりと上昇を続けて、ついには140ポイントを越えていたのです。
そして張りつめていた糸が突然切れるように、大幅下落へと繋がったのです。
これを教訓にして、今後はVIX指数そのものだけではなく、スキュー指数も同時に見るようにし、株価下落の前にその予兆を感じ取れるようになっていただければと思います。
(eワラント証券)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。