ソフトバンクGのオプション取引が意味するものとは?

先週末、海外紙が関係者筋の話として、ソフトバンクグループ(9984)が米ハイテク企業の個別株オプション取引を行っていることや、それにより大きな含み益をあげたと報じました。この報道の後、ハイテク株を中心とした米国株式市場が大きく下落したことによる収益減・損失発生懸念から9月7日の同社株価は大きく下落、その後も9月9日まで続落が続いています。


オプションって何?

ソフトバンクGは米ハイテク株を対象とする多額のコールオプションの購入を含むオプションの取引を行ったといわれています。その取引規模は額面ベースで300億米ドルとも500億米ドル規模ともいわれています。

eワラントの取引をしたことがある方ならよくご存じかもしれませんが、コールオプションとは、対象となる資産を「一定の期日」に、「一定の価格」で買う権利のことを表します。この「一定の期日」のことを「満期日」、「一定の価格」のことを「権利行使価格」と言います。

例えば、A社の株式を対象とする満期日:10月31日、権利行使価格:1,000円のコールオプションを100円で購入するとします。10月31日のA社の株価が1,300円だったとすると、コールオプションの保有者は権利を行使することで1,000円でA社株を調達し、市場で1,300円で売却することでその差額分(1,300 – 1,000 = 300円)を得られることになります。言い換えると、最初に100円で購入したコールオプションの価値が300円に上昇したとも言い換えられます。しかも、この差額は対象となる資産、ここではA社の株価が権利行使価格を超えて上昇すればする分だけ大きくなりますので、対象となる資産の価格が上昇するほどコールオプションの価値が上がることになります。少ない元手で大きな投資効果を得られることがあるというのが、オプション取引の大きな特徴です。

一方で、10月31日のA社株価が権利行使価格を下回ってしまった場合(例えば900円)、わざわざ権利行使して市場価格より高い1,000円でA社株を調達する必要は無くなるので、このコールオプションは無価値となります。すなわち100円で購入したコールオプションの価格がゼロになったと言えます。現物株投資であれば株式が上場廃止にならない限りは株式が無価値になるということはないですが、コールオプションは満期日に権利行使価格を下回ると無価値になってしまいます。その点においてはリスクが高い取引と言えます。


オプションを組み合わせた投資戦略

では、ソフトバンクGがただ単純にコールオプションを買ったのかというと、どうもそうではないようです。一部報道によると、ソフトバンクGはコールオプションを使って、「バーティカル・ブル・コール・スプレッド」という投資戦略を取ったのではないかと見られています。

「バーティカル・ブル・コール・スプレッド」とは権利行使価格の低いコールオプションの「買い」と権利行使価格の高いコールオプションの「売り」を組み合わせた投資戦略です。単純なコールオプションの買いと違い、対象となる資産の価格が上昇しても利益は限定的となってしまう点がデメリットですが、資産の価格が下落してしまったときには買いポジションの損失を売りポジションの利益で相殺して損失を軽減することができる点がメリットとして挙げられます。


このような特徴から、バーティカル・ブル・コール・スプレッドは相場に対して「中立」から「やや強気」な見通しのときに使われることが多い投資戦略です。単純なコールオプションの買いや現物株の買いが相場に対して「強気」なときに使われることが多いのとは、やや趣が異なります。

ソフトバンクGが投資をしたと見られているオプションの対象である米ハイテク株は、新型コロナウイルスの世界的流行の影響で大きく下落した3月以降大きく上昇しています。もし報道の通りソフトバンクGがバーティカル・ブル・コール・スプレッド戦略を採っているのだとすると、今後の米ハイテク株は大きく下落はしないまでも、上昇幅は限定的になるであろうと見ているのかもしれません。


(eワラント証券 多田幸大)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。