テクニカルの説明力が高い時間帯

世界における新型コロナウイルスの新規感染者数は毎日10万人近い水準にまで増加し、一向に減少する兆しはないが、欧米、そして、日本を含むアジアの国の中には、自国の新規感染者数の減少傾向を受けて、経済活動の再開に踏み出す国も出ている。

このような状況の下、やはり、このウイルスに打ち勝つために必要な治療薬、そして、本源的な解決に繋がるワクチンの開発に関するニュースが市場に大きな心理的な要因として働いているようだ。5月18日の米国市場では、バイオ医薬の大手社であるモデルナ社が開発を進めている新型コロナウイルスのワクチンが、初期段階の小規模治験ではあるものの、45人の抗体形成に成功し有望な結果を示したというニュースが株式指数のみならず原油相場においても大幅な上昇を招いた。ところが、一夜明けると、「データが不十分で信ぴょう性が低い」と指摘するアナリストが現れ、また、同社が1760万株の発行によって13億4000万ドル相当を調達する増資計画を発表したことから、市場全体が一気に利食い売りに押されるなど、「上げては下げる」、「下げては上げる」という、テクニカルを意識したレンジ相場から相変わらず抜け出せない状態にいることを強く印象づけた。

前回(4月20日)の寄稿において、新型コロナウイルス・ショックの後、かつてないスピードで急激に市場動揺度が収まり、既にテクニカル的には、一気に上値を追うには厳しい水準にまできている旨を書いたが、その前営業日である4月17日の終値でダウの25日移動平均乖離率(当日引け値を平均値に含むベース)は10.75%という水準に達していた。

このダウの25日移動平均乖離率は、全く市場関係の番組で取り上げられなかったが、同数値が10%を上回るのは2009年3月26日以来のことであった。2009年3月というのは、世界の主要な株式指数がリーマンショック後の最安値を10日に記録し、その後、大きな買戻しが生じて指数が上昇軌道に回帰していった月である。

よく、「リーマンショック、そして2015年夏の上海ショックの際にも、第2波の下げにより、株式指数が最安値を記録したのはその半年後」と言われるが、25日移動平均乖離率というテクニカル指標は、かつて「半年」を要した市場の高揚度の示現が、今回は極めて早く表れたことを物語っている。

企業の決算発表が引き続き行われているが、前回指摘したように、蓋を開けてみると、やはり2020年度の業績見通しを開示できない企業が続出している。1株あたり利益(EPS)に基づくPERの算出は、個別銘柄、そして指数全体においても困難な状況が始まっており、市場の動向はテクニカル要因がその説明力として高い状況が続くことを予想しているようだ。


前回載せた、日経平均の3乖離合計グラフ(5日、25日、75日の移動平均乖離率の合計の5日移動平均値)を再度掲載する。

実際の日経平均(青線)が、このプラス5%水準(赤線)を超えたときを丸で囲っているが、重要なことは、その後の指数の下落は、この赤線が下向きになった後に起きているということである。現在は、青線が赤線水準にまで接近し、ほぼ同じ水準となっているが、肝心の赤線は幸いにも下落傾向を示していないものの、上昇が一服し、横ばい推移となっていることが見て取れる。このテクニカル指標はあくまでも一例に過ぎないが、何か自分がモニタリングをし続けるテクニカル指標を決めて、過去のパターンと現在の状態をつぶさに追っていくことが肝要である。


(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。