ナンピン?いえいえ、システマティックな売買です

テクニカル分析において、最も重要視している指標を2つ挙げよと聞かれたら、迷わず、「移動平均」と「RSI」と答えるが、厳密に言うと、これらをオリジナルに加工することによって得られた結果により、相場の方向性を判断している。

昨年の2月と7月に軽く紹介した、「RSI14日合計」は、毎日算出されるRSI14日の数値の5日移動平均値と10日移動平均値をただ足しただけのものであるが、このオリジナル・テクニカル分析は、自分の中で、過去3年連続で“MVP”を密かに与えているものである。

5月3日に「米国と中国は大きな素晴らしい取引ができる」とツイートしたトランプ大統領が、「(現在10%の関税で猶予している)中国の2,000億ドル相当の製品の関税を25%に引き上げる」と宣言したのが、その2日後の5月5日のこと。

それから世界的に株式市場は不安定な動きとなったのだが、この「RSI14日合計」が天井を打ってその後の「日柄期間入り」を示唆したのが、米国ダウにおいては4月18日、日経平均については10連休前の4月23日とそれよりもかなり早い時期であった。そして、ダウの数値は先週初にグラフで赤く囲った80%以下の水準にまで下落している。第一弾の買いを考えるタイミングとしてはこの時期であったと思われる。

「日柄期間」が、単にその後の再上昇のための“助走期間”となる場合と、下落を伴う場合があるが、後者の場合、「日柄日数」、「調整値幅」に加えて、「市場動揺度」を買うタイミングを測る材料として用いなくてはならないと考える。

「市場動揺度」と言うと、すぐに米国の“恐怖指数”ことVIXが想起されるが、これはその単純値と米国ダウの推移をよく目にするが、実に分析が困難で、「メドが20で、これを超えたら市場はかなり不安心理を抱えている」と、論拠に乏しい使われ方をされているようだ。

このVIXであるが、これも同じく過去に紹介したオリジナルな分析である「VIX可視化指数」(算出式はグラフ下部に記載)を載せるが、今回の「市場動揺度」が、昨年1月下旬から経験した急落相場ほどではないものの、10月の米国10年債利回りが急上昇したことによる大きな調整局面や、クリスマスにトランプ大統領が3要人を更迭するとツイッターに書き、その後、年明けにアップルショックでセリング・クライマックスを迎えたときに近い大きなものであったことも分かる。

また、補助線を引いた92の水準を割り込んだのが5月9日と随分早く、その後も下落を続けたが先週底打ちが示現し、(先週末の)5月17日時点で89.0となっている。2回目の買いを入れるとしたらこのタイミングであったということだ。

今回の下落において、“なかなか買いの手が出せない”と言われた理由の1つが、10連休があったことにより、日本株の調整度が掴めないということであったが、これは平成最後の立会い日(4月26日)から5月14日まで7日続落となったことにより、4月25日と5月14日の終値の比較によって累計の下落率を計測することによって判断できると考えている。

この間の日経平均の累計下落率は5.6%であるが、この数値は今回の当事国である中国の上海総合指数の7.7%に次ぐ大きなものである。ちなみに、アジア、欧州、米国各地域の指数下落率を列挙すると、香港ハンセン:4.8%、韓国KOSPI:5.0%、英国FTSE100:2.6%、ドイツDAX2.4%、フランスCAC40:3.9%、ロシアRTS:1.4%、米国ダウ:3.5%、S&P500:3.1%、NASDAQ:4.7%となっている。

これだけを見ると、十分に下落した印象を持つが、今回の7日続落は、2016年4月6日以来のことであり、このときの累計下落率が8.3%であったことを考えると、やはり、(日経平均だけでなく)全市場において、「調整値幅」という点で、それほど大きくなかったことが分かる。やはり、“なかなか買いの手が出せない”相場であったのかもしれない。

最後に、この「調整値幅」の計測に用いている移動平均乖離に関するグラフを掲載する。

これは、米国ダウの5日移動平均乖離率、25日移動平均乖離率、75日移動平均乖離率を合計し、その5日移動平均値を辿ったものである。これを見ると、マイナス7.5%やマイナス12.5%といった、急落時に達するゾーンまではまだ下落していないことが分かる。

3回目の買いはまだ、ということのようだ。

よく、“なんとなくのナンピン”を入れる人がいるが、本来、ナンピンに限らず、数回の買いを入れる場合、それは、このように、幾つかのテクニカルのサインに従って行われるべきであると考えている。それがシステマティックな運用である。


(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。