ハイテク株が不冴えな動きとなっている「需給要因」とは

4年前、米国においてその政治・経済手腕の未知数から、もし、大統領に選出されたら相場は大きく調整するのではないかと事前に言われていた共和党のトランプ氏が大統領選に勝利した際、株式市場は逆に大きく上昇したのだが、今回も、民主党の、大統領選・上院選・下院選における“トリプル・ブルー”は達成されなかったものの、株式市場は大きく上昇した。

今回の上昇の序盤は、「リスクオン」の動きと言われたが、私は当初から、これまで相場を牽引してきた情報通信業を中心としたハイテク株の手仕舞い売りと、それまでコロナ禍で空売りの対象となっていた銘柄群の買い戻しが並行して行われる手仕舞いの「リターン・リバーサル相場」と解説してきたが、市場では現在、「リスクオン」という言葉を「バリュー・リバーサル相場」に置き換え、多くの証券会社がこれを後押しするかのようなバリュー株に関するリポートを発表している。

今回の上昇を、11月6日の終値をゼロとして、その後の米国ダウ指数の累計上昇幅、ボーイング社の累計ダウ騰落累計寄与、同じく、これまで相場を牽引してきたアップル、マイクロソフトに、8月末からダウ構成銘柄に加わったセールスフォース・ドットコムを加えた3社のダウ騰落累計寄与を辿ると、このような形となり、11月18日時点でダウが1,115ドル上昇しているが、そのうち299ドル分をボーイング1社が占め、上記3社に至っては、108ドル余りダウを押し下げていることになる。

このことは、ファイザーが独ビオンテックと共同開発しているワクチン、また、モデルナが開発しているワクチンの双方が、初期データの臨床試験の有効性が90%以上であったことを発表し、米食品医薬品局(FDA)に、ワクチンの緊急使用許可を申請する見通しとなったことから、コロナ禍で大きく業績を落とした業種の今後の復活をイメージさせた(買戻しが進んだ)と推測されるとともに、大統領選の1カ月ほど前の10月6日に、下院でGAFAのいわゆるプラットフォーム事業に関する報告書が纏められたことを受け、民主党が「事業の分離や反トラスト法(独占禁止法)の強化」を提案していたことも背景にあるかもしれない。

しかし、それ以外にも、何か大きな「需給」が存在している可能性もある。
ここで思い出されるのが、ソフトバンクグループの決算である。11月9日に開かれた決算説明会で、孫正義会長兼社長は、資産運用子会社を通じて保有する株式の時価の1%程度(4,000億円)のコールオプションを保有していることを明かし、夏にハイテク株が堅調であった際に、市場でその需給要因として囁かれた同社のオプション戦略を暗に認めたのだが、6月末時点で約10億ドル保有していたアマゾン・ドット・コム株が9月末に約63億ドルに増加しており、その他にも、6月末時点では米証券取引委員会(SEC)に報告のなかったフェイスブック株を約22億ドル、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズを約18億ドル、ネットフリックス株を約10億ドル保有していることが判明している。

しかし、その孫正義会長兼社長が、一転、11月17日のニューヨーク・タイムズ主催のオンライン討論会で、新型コロナウィルス感染拡大に伴う『最悪の事態』に備えて手元資金を積み増すため、保有資産の売却を積極的に進めており、約400億ドルの資産売却計画を800億ドルに増やしたことを明らかにした。このことが、ハイテク株売りの「需給要因」として存在している可能性はある。


(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。