ブレグジットの経緯と総まとめ

 英国の欧州連合(EU)からの離脱、いわゆるブレグジットに関しては報道があるものの断片的な情報であり、英国とEUの交渉状況や英国内の政局や今後のリスクイベントとして何が控えているのか分かりにくいと思われます。

本稿ではブレグジットに関するこれまでの経緯をまとめ、現時点で懸案となっている事項や今後発生しうるリスクイベントについて総点検しています。また、eワラントを活用した取引戦略についても紹介しています。

これまでの経緯

 2016年6月23日に行われた国民投票で、英国民は僅差でしたがEU離脱を選択しました。

この結果を受けて当時の英国首相のキャメロン氏が辞任し、メイ氏が首相に就任しました。

メイ首相は2017年3月29日にEUに対して正式な離脱通知を行い、同年4月18日に突如として2020年に実施されると見られていた総選挙の前倒しを発表しました。

 2017年6月8日に実施された英国の総選挙でメイ首相率いる与党・保守党は過半数割れとなりました。メイ首相は同年6月19日から始まることになっていたEUとの離脱協議に先んじて、国内の支持基盤を固めておくという賭けに出たわけですが、この目論見は失敗に終わりました。これ以降、メイ首相の進退問題は常に懸念される状況となり、為替相場では英通貨ポンドが下落しました。

 予定どおり2017年6月19日からEUとの離脱交渉が始まり、1年を超える交渉の末、2018年11月25日のEU首脳会議にて、英国とEU間で離脱協定案と協定に添付される政治宣言案が承認されました。同案については、英国とEUでそれぞれ議会の批准手続きがなされることになっていましたが、英国ではメイ首相が2018年12月11日の下院採決を延期しました。与党・保守党内の離脱強硬派と、2017年6月の総選挙で敗北してから閣外協力を得ている北アイルランドの民主統一党(DUP)が同案に強く反対しているためです。EUは再交渉の可能性を否定しています。

今後の動向とリスクイベント

 離脱協定案の内容としては、英国とEU双方の市民の権利保障、2019年3月29日から2020年12月31日までの移行期間(1回だけ期限付きで延長可能)、英国がEUに支払う清算金(390億ポンド程度か?)などが含まれています。

 また、英国の北アイルランドとアイルランドとの国境問題については、「バックストップ」がキーワードとなっています。「バックストップ」とは、移行期間中にEUとの通商協定がまとまらなかった場合に、国境を解放しておくための対策です。現在、英国の北アイルランドとアイルランドの国境では厳格な国境管理はなされていませんが、英国がEUから離脱するとモノやサービスは国境で検査を受けることになります。英国もEUも厳格な国境管理は望んでおらず、「バックストップ」は厳格な国境管理を避けるためのものです。仮に「バックストップ」が適用されると、EUと英国全土を統一の関税区域とするほか、北アイルランドではEU規制が適用され、さらに北アイルランドと英国のグレートブリテン島の間では税関検査をすることになるなど、経済的に英国を分断するようなものとして英国内では「バックストップ」に対する懸念が強くなっています。

 メイ首相は12月11日に予定していた離脱協定案の採決について、2019年1月14日の週まで延期すると発表しました。早速17日には野党・労働党がメイ首相個人に対する不信任決議案を提出するなど、メイ首相に対する風当たりは引き続き強いものがあります。不信任決議案が否決されたとして、目先のリスクイベントとしては1月の英国下院での離脱協定案の採決となるでしょう。

 もし再度採決が延期された場合、タイムリミットは英国がEUを離脱する2019年3月29日となります。これまでに英国下院とEU議会で離脱協定案が批准されなければEUとの合意のない離脱、いわゆる「ハードブレグジット」となり、英国は大混乱に陥ると見られ、英国に進出している世界中の企業に関税負担やサプライチェーンの見直しなど多大なる影響があるものと思われます。

リスクに備えるならeワラント

 ブレグジット交渉の影響が大きいのは英ポンド相場でしょう。ポイントは1月の英国の離脱協定案の採決です。否決されれば「ハードブレグジット」の可能性が高まるため円高ポンド安、可決されれば円安ポンド高となることが予想されます。このように相場がどちらに動くか分からない政治イベントにはコール型eワラントとプット型eワラントの両方を買い付ける「両建て戦略」が有効かもしれません。

 「両建て戦略」では相場の方向性ではなく、相場の変動性を収益機会にします。イベント発生で相場が急変し、コール型又はプット型のどちらかが大きく上昇し、もう片方の下落を相殺することを狙います。eワラントは短期間で何割、何倍にも上昇することがある一方で、最大損失は投資元本までに限定されているため、コール型とプット型の両建てにより、トータルで若干の利益を狙う戦略が可能です。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。