リーマンショック時との動揺度比較

一カ月前に、COVID-19の感染者数が欧米でここまで甚大なものとなると予想した者はいないであろう。「株式、原油 VS 債券、金」というリスクオン・リスクオフの関係がしばらく続いていたが、結果的に金相場も崩れてしまい、また、米国債についても、二度にわたるFRBの緊急利下げにより実質ゼロ金利となったことから、さらに債券利回りの低下余地はあるものの、催促相場を行っても肝心の利下げ余地がないことから、手を出しづらい状況となっており、「全てキャッシュ化」という市場心理として陰の極に向かっている。

ここにきて、「リーマンショック以来」との言葉が多く用いられているが、実際の市場動揺度を計測化して解説しているものが少ないため、今回は3つのオリジナルなグラフを用いて説明する。


VIX可視化指数と名づけたこのグラフは、直近25日間のVIX値の累計値に対する、直近5日間、10日間の累計値の関係から市場の急激な動揺度を測るのに用いている。この値が小さいほど市場の動揺度が大きいのだが、実は、リーマンショックよりも、2015年夏に起きた上海ショック、そして、トランプ大統領による鉄鋼・アルミの関税引き上げ宣言に端を発した2018年1月末からの急落時の方がその動揺度は大きく、今回はさらにそれよりも大きいことが分かる。

これは、2008年秋のリーマンブラザーズの経営破たんは、その年に改めて噴出したサブプライムローン問題の象徴的な出来事に過ぎず、その春には既にベアースターンズ証券が経営破たんを起こしており、半年間におよび金融不安(信用不安)の状態が続いていたことから、リーマンショック以前よりVIXが高い状態にいたという要因が大きい。

今回、米国株式市場がCOVID-19により大きく下落した起点が2月24日のダウ1031ドル下げであったと考えると、3月20日時点での経過日数は20営業日であり、25営業日が経過すれば分母の数値が全て起点後の数値となるから、逆に言えば、あと5日間はこの可視化指数が下げる可能性があるということである。何れにせよ、“直近の衝撃度、動揺度”という点から今回は未曾有であることが分かる。

これは、ダウのザラ場の「高値-安値」(日中値幅)を前日終値で割ったものを5日間、25日間で累計値をとり、さらにそれを合計したものだが、ザラ場の動揺度は、上海ショック、鉄鋼・アルミショックよりも遥かに大きいものの、リーマンショック時ほどには達していないことが分かる。しかし、これには理由がある。今回の下落については、先週、時間外取引で(米国株式指数)先物取引がサーキットブレーカーに抵触したように、前営業日の引けからかけ離れた水準から相場が始まることが多いからである。それにしても、ザラ場の動揺度も極めて高いことが分かる。

これはシンプルに5日、25日、そして75日に移動平均乖離率を求め、それを合算したものだが、既に、これまで経験したことのない水準に達していることが分かる。これについても、構成要素に25日移動平均乖離率が入っているため、あと5日間は下げる可能性がある。リーマンショックの際に、「テクニカル分析は壊れた」と言われた。それは、それまでの経験上得られていた抵抗線などのシグナルがことごとく破られたからであるが、今回も確実にその状態に陥っていることがご理解いただけたかと思う。


(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。