下方修正されたIMF世界経済見通し

IMF(国際通貨基金)は10月12日、最新の世界経済見通しを発表しました。年4回、1月、4月、7月、10月に同組織が発表する経済見通しは、OECD(経済協力開発機構)の経済見通しとともに、マーケット関係者が注視している指標のひとつです。

今回発表された世界経済見通しでは、21年の実質GDP成長率が前回予想から0.1ポイント減の5.9%と下方修正されましたが、22年予想は4.9%で据え置かれました。前回7月は21年予想が6.0%で据え置きだった一方、22年予想は4月時点の4.4%から0.5ポイント増の上方修正と大きく引き上げられていました。これはパンデミックに対応したワクチンの普及や各国の政策対応が反映された結果と言えます。

今回のほぼ「据え置き」という結果は、デルタ株の感染拡大によるパンデミックの再燃に加え、景気回復に伴う需要増で供給体制が追い付かず、商品価格の急上昇を招いたことによるインフレ加速が成長の足かせになっていることに起因したものだと考えられています。21年の見通しで、先進国全体では0.4ポイント減の下方修正となり、とりわけ米国は7月時点の7.0%から1.0ポイント減の6.0%と大幅な引き下げとなりました。日本も同様の理由で0.4ポイント引き下げられています。また、新興国でもASEANが1.4ポイント減と、ロックダウンなどによって経済活動が大きく制約された影響で大きな引き下げとなりました。一方で、ロシアや中東などの資源国を中心とした国・地域の上方修正で、マイナスが相殺されている格好です。

22年については米国が0.3ポイント、日本も0.2ポイント引き上げられました。ただ、新興国全体では回復の遅れが目立ちます。というのも、先進国はワクチンの普及が進み、積極的な財政出動による経済の下支えがなされてきました。一方で、新興国では相対的にワクチンの普及率が低いうえ、政策支援も限定的となりやすい状況です。そこに、資源価格の上昇などインフレ加速が追い打ちをかけ、先進国と新興国の成長格差が拡大する結果を招く可能性が足元で高まっています。また、新たな変異株の出現やサプライチェーンのダメージが想定以上に大きかった場合は、インフレリスクが高まり、長期化する懸念もあります。そうなれば先進国はインフレ抑制のため、早期の金融正常化を進めなければならなくなるかもしれません。

しかし、こうした懸念を払しょくするためにIMFは、世界的なワクチン普及を加速させる国際協力、資金制約を抱える国に対する流動性提供や債務救済が不可欠としています。ワクチンの普及によって、新たな変異株の出現を阻止できる可能性があり、サプライチェーンの正常化とともに経済の回復を早めるものと見られています。そうなれば、インフレは徐々に緩和され、来年中ごろにはパンデミック以前の水準に戻るとの見立てです。つまり、今回の急速なインフレは一過性のものとの見方というわけです。

また、IMFは長期的な成長の推進力となるのは「生産性の伸び率を高める」こととしています。当然、そのためにはイノベーションが果たす役割が重要だとも指摘しています。ただし、一言でイノベーションを加速させると言っても、一筋縄ではいきません。実際、先進国ではイノベーションの原動力となる研究開発投資(R&D)が一貫して伸びているにもかかわらず、過去数十年にわたって、生産性の伸び率が鈍化しているとの懸念もあるのです。しかし、だからこそ脱炭素、EV化、IoTなど技術革新を通じた社会構造や産業構造の変化は、想像以上のインパクトを生む可能性があり、これからも中長期的に主要な株式市場のテーマとなるでしょう。


(eワラント証券)

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