中国株の好需給は出来高に表れている

今年に入ってからの日本株の他市場に比べた出遅れ、言い換えれば、アンダーパフォームが目立っている。

3月19日現在での日経平均の今年の上昇率は7.8%であり、アジアの主要市場では韓国KOSPI指数の6.7%よりは高いものの、香港ハンセン指数の14.0%、上海総合指数の23.9%などに大きく水をあけられている。

この状態は、ロシアを含む欧米市場を見渡しても同じであり、“合意なき離脱”で揉めている英国FTSE100の上昇率8.9%さえも下回っていることには、もどかしささえ覚えてしまう。

それでは、今年に入ってから主要市場で最もパフォーマンスが良い市場はどこかというと、それは上記の中国市場である。そして、この高いパフォーマンスは2つの要因によってもたらされていると考えている。

その1つは、先に行われた全人代で示された、6.0%から6.5%という幅をもたせて掲げられた今年のGDP成長率の達成が、“既に濃厚”だということである。

昨年、中国のGDP成長率は前年比6.6%増となったが、この数字は28年ぶりの低い水準であったことから、当初は「中国経済の失速」といった捉えられ方をされた。しかし、世界中見渡してもこのような高い水準を維持している国が無いこと、そして、そのことは、昨年よりも低い今年の成長率目標をもってしても同じであることから、全人代の経済成長率の目標数値を“期待はずれ”と考える向きはないようだ。

それどころか、中国政府が昨年末より打ち出した、公的資本形成、減税、金融機関における預金準備率の引き下げなどを中心とした施策により、“最低限守らなくてはならない”と市場が考えている、上記成長率の下限である6.0%成長は、ほぼ達成可能と現段階で考えられており、もし、この成長に向けた巡航速度から中国経済が外れた場合でも、次に打てる手段はいくらでもあることが容易に想像できる。

それは、結果的に大成功であった、リーマン・ショック後に中国政府が採った施策が当時の中国GDPに占めた比率に比べ、今回はその1割にも満たないという事実が想起させるのだ。

もう1つの理由は「需給要因」である。

今月初めに、世界的な株式指数であり、かつて、その組み入れ対象とされることが中国にとって“悲願”であった「MSCI」における組入れ比率が大きく上昇することが明らかになったのである。

中国A株がMSCIに組み入れることが発表された(採用銘柄も発表)のは、昨年6月のことであった。当初の組入れ比率は、昨年9月時点で5%とされたが、その比率について、この3月から9カ月かけて上昇させ、今年11月末時点で20%に引き上げるという。

また、今回明らかになったことで特に注目されるのは、深セン市場の中小型成長株が多く含まれる「創業板」から、時価総額がやや大きい銘柄を組み入れて、早期に10%水準にまで引き上げるということである。

この創業板は、3月19日現在で、今年の上昇率36.7%を記録しているが、組入れ報道後、一時その数値は41.8%にまで上昇した。需給要因が上昇の後押しをしたことは明らかであろう。

この事象を「売買高」という面から見てみると、昨年、この創業板の指数は年間で28.6%の下落となり、一昨年に比べて、出来高は28.5%も増加している。これは、中国市場、とりわけ中小型株の下落に伴う損切りの動きであり、「売り需給」が出来高を膨らませたと考えられる。

一方で、今年はというと、3月19日までの営業日における平均出来高が、昨年一年間平均の1.53倍に膨らんでいる。ボリュームが急増しているのだ。これは、昨年と真逆の「買い需給」が出来高を膨らませると言える。

先進国の株式市場において、「持続的に上昇する際には出来高が膨らまない」という状態になってから、既に長い時間が経つが、中国市場だけは「上昇時に出来高が大きく膨らむ」という特性をまだ持っている。

これまで、その特性が信用買い残や場外配資という資金の融通業者からの借入れを膨らませ、結果的に、その後バブルが弾けるということを繰り返してきたことも確かではあるが、現在は、そのことを忘れ、MSCI要因による好需給を謳歌している状態である。この状態はまだ当面続くであろう。


(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。