今回のグレートローテーションをもたらしたもの

米国とイランの緊張という大きな地政学リスクに直面して始まった今年の相場であるが、両国の衝突がこの先も無いという確証は全く無いものの、米国の株式指数が最高値を更新していることや、相変わらずハイテク株がそれを主導している状態を見ると、昨年後半から世界的に起きている、株式への資金シフトという流れはまだ持続していることを感じる。

この“グレートローテーション”とも呼ばれている資金シフトは、株式への資金流入の前に、債券からの資金流出というプロセスがあったことを検証してみたい。

これは、米国の政策金利(FF誘導ゾーン)と2年物、10年物の米国債利回り推移を示したものだが、ちょうど昨年の今頃、世界的に中央銀行の再金融緩和姿勢が明確となりつつあり、それに伴う政策金利の引き下げ見通しが債券利回りの低下(価格は上昇)を加速させていき、赤丸で囲った部分の左の期間では、3カ月以上に亘り、2年債のみならず、10年債の利回りもFF誘導金利の下限よりもさらに低い状態となっていた。

これがいわゆる、利下げの催促相場なのだが、実際に7月末にFOMCにおいて利下げが決定されると、赤丸部分において、債券相場は一気に次の利下げを催促する行動に出た。

この時点での先物市場の利下げ織り込み具合は、(8月はFOMCが開催されないことから)、9月、そして10月末の2回のFOMCにおいて、累計0.5%の利下げを行うというものであり、まだ2カ月半以上の時間があるのに、さらにそれ以上の利下げまでも織り込む水準に低下し、結果的に最後は、利食い売りによって金利が上昇したことが分かる。

この最後の部分の債券売りが、今回のグレートローテーションのきっかけとなったことは確かであろう。

しかし、なぜこのような少し強引にも映る催促相場を行わざるを得なかったのかといえば、膨大な資金が米国の債券ファンドに流入していたからである。複数の調査機関のデータで、昨年初から7月までの間にその金額は、約6000億ドルから約8000億ドルであったと推定されている。1ドル=108円で換算して、少なくとも65兆円という金額だ。

因みに、この間、株式ファンドから資金流出した金額については、複数の調査機関が、約2000億ドル(21兆6000億円)と推測としている。

これが一気に逆流するきっかけとなったのが、上記の金利上昇であるが、この“米国発”の流れは、日本株の外国人動向において、これまでその主役の座を長期に亘り守ってきた「欧州」に替わって、「北米」がその地位につくという事態を昨年招いた。

現在発表されている昨年11月までの動向を見ると、年次で「欧州」が1兆4000億円以上売り越しているのに対して、「北米」は約1兆円の買い越しで日本株(指数)の上昇に大きく寄与したのである。

これは無論、日本株の現物(現金)の金額であるが、外国人全体でのグレートローテーションの動きを測ると、(私が、それが始まったと考えている)昨年8月23日を含む週からこの1月10日までの間に、日本株の現物(現金)を全体で約1兆7000億円買い越している。

しかし、この流れがさらに大きく表れたのは、何度か紹介した先物動向である。

このグラフを見ると、昨年8月16日時点で、過去最大の5兆5000億円もの売りポジションとなっていた外国人が、この1月10日までに約3兆5000億円も買い戻したことが分かる。実に、現物のちょうど倍の金額である。

このように、グレートローテーションが生じると、現物よりもまずは先物市場の(外国人)ポジションにその傾向が見られることは、長い歴史の中で繰り返してきた日本市場固有の特徴であることを覚えておいて欲しい。


(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。