今後の成長期待の分野、量子コンピューターと関連株

従来型のコンピューターをはるかにしのぐ性能を持つ量子コンピューターに関する報道が徐々に増え、株式市場の注目テーマになりつつあります。しかしながら、現在実用化されている量子コンピューターが利用できる範囲は限られていますし、大量生産される状況にはありません。逆に今後の大きな成長分野になる可能性を秘めているとも考えられます。本稿では量子コンピューターに関する簡単な解説と、影響のある分野と関連株について紹介しています。

量子コンピューターとは?

量子とは物質を形成する原子や光の粒である光子などの素粒子などを言います。極めて小さい物質の粒とイメージすれば良いでしょう。量子コンピューターは極めて小さい量子の物理現象を利用したコンピューターのことです。量子コンピューターの原点は、従来型のコンピューターを小型化する過程で、回路があまりにも小さくなったために電子が回路外にすり抜けてしまうという問題でした。この問題をむしろ逆手に利用しようというのが量子コンピューターの発想です。

日本においては基本原理の開発において成功している事例はあるものの、実用化までには至っていません。量子コンピューターを実用化、商用化したことで有名になったのが、カナダの非公開企業であるDウェーブ・システムズです。同社の量子コンピューターは複数の選択肢がある場合に、最も効率的な答えを導き出すという組み合わせ問題、いわゆる最適化問題の処理に優れています。

Dウェーブ・システムズ以外では、米IBM(IBM)、米アルファベット(GOOG)、米インテル(INTC)、米マイクロソフト(MSFT)が開発を発表したり、試作機を公開しています。なお、最適化問題以外にも汎用的に利用できる量子コンピューターの実用化と商用化にはまだ時間がかかると考えられています。

量子コンピューターが影響を与える分野

当面はDウェーブ・システムズの量子コンピューターの導入で改善する分野に恩恵があると考えられます。これまで、Dウェーブ・システムズの量子コンピューターは米国政府やNASA、大学などの研究機関に利用されてきました。民間では米ロッキード・マーティン(LMT)がいちはやく2011年に購入しているほか、アルファベット(GOOG)も利用しています。今後も民間企業への導入事例は増えていくものと思われます。

海外の事例として、ドイツ自動車大手フォルクスワーゲンはDウェーブ・システムズと共同で大都市の交通量シミュレーションを行い、混雑解消のためのアルゴリズムを開発しています。シミュレーションには北京の約1万台のタクシーの走行データを用いたとのことです。この技術は同社の自動運転車に活用されると見られ、自動運転技術で激しい競争を行っている自動車業界での量子コンピューターの導入が進む可能性があります。

また、大量のデータを処理して最適な答えを導き出すという点では人工知能(AI)の分野でも活用できると考えられます。アルファベット(GOOG)は2013年からウェブ検索、音声認識、機械学習などの最適化問題への応用においてDウェーブ・システムズと提携しています。

一方、量子コンピューターの登場で懸念されているのがサイバーセキュリティの分野です。従来の技術で暗号化されたデータも、超高速で処理できる量子コンピューターによって解読されてしまう可能性が指摘されています。サイバーセキュリティを手掛ける企業にとって量子コンピューター対策は必須のものとなっていくでしょう。この点でもアルファベット(GOOG)は量子コンピューターでも解読できない方式でデータを暗号化する技術の開発を行っています。

量子コンピューター関連の日本株

量子コンピューターに関連する日本株は少なく、Dウェーブ・システムズ関連株という状況です。また、量子コンピューターの普及にはまだ時間がかかるため、量子コンピューターの製造側よりも利用側に恩恵がありそうです。以下の日本株のうち、リクルートHD(6098)とブレインパッド(3655)はeワラントの対象にもなっていますので、eワラントを利用したレバレッジ投資も可能です。

リクルートHD(6098):傘下のリクルートコミュニケーションズが、量子コンピューターをマーケティング、広告の最適化に利用するため、Dウェーブ・システムズとの共同研究を本格化することを2017年5月に発表。(同社株を対象にしたeワラントはこちら

フィックスターズ(3687):Dウェーブ・システムズと提携し、同社の量子コンピューターの導入支援を行うと2017年6月に発表。

デンソー(6902):Dウェーブ・システムズの量子コンピューターの利用を念頭に、自動運転支援に関する実証実験を始めるという内容が2017年9月に報道される。

JSR(4185):化学新素材の開発に米IBMの量子コンピューターを試験導入するとの内容が2017年9月に報道される。

ブレインパッド(3655):人工知能(AI)、機械学習、データ解析関連のサービスを提供する同社ですが、量子コンピューターが同社のビジネスとの相性が良いため、物色対象に。(同社株を対象にしたeワラントはこちら

エヌエフ回路設計ブロック(6864):電子計測器を手掛ける同社の製品に、量子コンピューターにおける超電導デバイスの信号増幅を用途とする機器があり、物色対象に。

(eワラント証券 投資情報室)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。