信用倍率という言葉をご存じでしょうか?
レバレッジを利かした株式投資として、投資家の間で昔から親しまれてきたのが信用取引です。
その信用取引において、買い残と売り残の量を比較したものが信用倍率になります。
株式投資を解説した本などには、「信用買い残の多い銘柄は要注意」だとか「信用倍率の高い銘柄の株価は上がりにくい」などと書かれているのが一般的です。
果たしてその定説は正しいのでしょうか?
確かに買い残が多ければ、今後の売り圧力になるわけですから、株価は上がりにくくなり、売り残が多ければ、今後の買い圧力になるわけですから、株価は下がりにくくなると言えるわけで、一見正しいようにも思います。
しかし見方を変えればどうでしょうか?
買い残の多い銘柄ということは、多くの投資家が今後上昇すると考えて株を購入しているわけですから、先行きは明るいのではないでしょうか?
逆に売り残の多い銘柄ということは、多くの投資家が今後下落すると考えて株を空売りしているわけですから、先行きは暗いのではないでしょうか?
このようにどこに主眼を置くかによって、見方は180度変わることになります。
そこで今回、日経平均構成銘柄を対象に、信用倍率を基にランキング化し、倍率の高い銘柄と低い銘柄のパフォーマンスを検証してみました。
検証方法と結果
以下の条件で検証しました。
- 検証対象:日経平均構成銘柄
- 信用倍率の定義:10倍以上の銘柄を高倍率銘柄、0.2倍以下の銘柄を低倍率銘柄と定義※1
- 検証方法:9月18日時点の信用倍率で、高倍率・低倍率と判断された銘柄でそれぞれバスケットを組成し、高倍率のバスケットをショート、低倍率のバスケットをロングする手法でパフォーマンスを測定
- 検証期間:6月1日~9月18日のヒストリカルデータを利用※2
検証結果は以下の通りです。

見事に解説本などの定説が正しいことになります。
信用倍率の高い銘柄は上値が重く、低い銘柄に比べてパフォーマンスで劣ることになります。
またこの間の日経平均株価の値動きは22,000円~23,500円のボックス相場でした。
従って、短期勝負が前提の信用取引勢からすれば値動きに乏しく、泣く泣く反対売買でポジションを閉じた可能性もあるでしょう。
いずれにせよ、この検証結果から言えることは、信用倍率の高い銘柄をショートし、信用倍率の低い銘柄をロングすれば、2カ月~3カ月スパンで利益を出すことができるかもしれないということです。
信用倍率の高低の定義として、今回は10倍以上と0.2倍以下を採用しましたが、その他にもアレンジのしようはあるでしょう。
また信用倍率は1週間遅れのデータになります。
従って日々公表されている貸借倍率を利用して検証してみるのも面白いかもしれません。
但し、貸借倍率は信用取引の中でも、制度信用のみを対象としたものです。一般信用の部分は含まれていませんので、注意が必要かと思います。
是非、試してみてください。
(eワラント証券)
※1 高倍率銘柄として、
- 東京電力HLDG【9501】
- 東洋製罐グループHLDG【5901】
- 富士フイルムHLDG【4901】
- 塩野義製薬【4507】
- 日本郵政【6178】
- 国際石油開発帝石【1605】
- 大日本印刷【7912】
- アステラス製薬【4503】
- コニカミノルタ【4902】
- 大平洋金属【5541】
低倍率銘柄として、
- TOTO【5332】
- 大阪瓦斯【9532】
- キッコーマン【2801】
- 静岡銀行【8355】
- オムロン【6645】
- イオン【8267】
- 松井証券【8628】
- 京王電鉄【9008】
- 日本通運【9062】
- 三菱倉庫【9301】
- 小田急電鉄【9007】
- アサヒグループHLDG【2502】
※2 信用倍率の高い銘柄・低い銘柄は、3カ月程度の短期間では頻繁に変化するものではないため、今回はバックテストで検証してみました。
* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。