利上げの幕は切って落とされた

米連邦準備制度理事会(FRB)は3月15、16日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、FF金利の誘導目標を従来の0.00%~0.25%から0.25%~0.50%へ25bp引き上げました。2018年12月以来、3年3カ月ぶりにFRBは金融引き締めに舵を切ったことになります。内容としては概ね市場の予想通りでしたが、パウエル議長は会合後の会見で、きわめて堅調な米国経済が利上げに耐えられる状況であるとしたうえで、必要に応じて利上げペースを加速させる可能性も示唆しました。また、バランスシートの縮小も5月から開始する (6日発表の議事要旨では950億ドル規模とも) との見方を示したことで、ややタカ派的な印象を市場に与えました。

今回のFOMCでは参加者の経済見通しや今後の利上げペースを示唆したドットチャートが示されました。前回見通しが示された2021年12月のFOMCでは早期の量的緩和終了と2022年の0.25%の利上げを3回に引き上げるというものでした。ちょうどコロナ禍からの回復による需給ひっ迫が資源価格や原材料価格の上昇を招き、インフレ率の上昇傾向が意識されたタイミングでした。しかし、そこから3か月が経過し、状況は一段と厳しいものになっています。景気回復観測から原油価格の上昇が続き、米長期金利は2月に入って2%を超えてきました。インフレが短期間で終息するとの見方はすでに過去のものとなり、ロシアがウクライナに侵攻すると、原油価格はさらに急騰、長期金利も急上昇、消費者物価も大きく跳ね上がる結果となって、FRBとしても利上げを加速せざるを得ない状況に追い込まれました。

3月のFOMCでは参加者の2022年経済見通しは実質GDP成長率が12月予想の4.0%から2.8%に下方修正された一方、インフレ率は2.6%から4.3%へと大幅に引き上げられました。2023年は成長率が2.2%に低下、インフレ率も2.7%に低下するとみています。FF金利は0.25%の利上げを2022年は7回、2023年は3.5回実施するとの見通しが示されました。参加者の金利予想の中央値も2022年は前回の0.875%から一気に上昇して1.875%となったほか、2023年は前回の1.625%から2.750%へと上昇しています。

しかし、足元では米10年債利回りは一段と急伸し、市場関係者の間では5月(3~4日)のFOMCで0.5%、さらに、6月(14~15日)にも0.5%の利上げが必要との見方さえ出てきています。ところが、中立金利は2.5%の予想から若干低下していて、短期金利が長期金利を上回る逆イールドの状態に陥っています。先行き景気減速の兆候との見方もあって、2022年後半の金融政策を占う上で、この状況が続くかどうか注目されています。原油価格の上昇が続く中、欧州を中心に景気減速懸念が高まっているほか、中国も新型コロナの感染再拡大によって、ロックダウンとなる都市も増えています。米国はロシア制裁の影響を受けづらいとみることもできそうですが、欧州や中国の景気減速によるエネルギー需要の縮小はインフレ抑制要因となることから、利上げを加速し、オーバーキルとなるリスクも意識され始めています。

とはいえ、2日に発表された3月の雇用統計では雇用者数の堅調な伸びと失業率の低下が確認されたほか、時間当たり賃金が前年同月比5.8%増と大きく伸び、インフレ圧力が一層強まっていることが示されました。利上げ加速の可能性は高まったとみられますが、FRBは今後難しい舵取りを強いられそうです。

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(カイカ証券)

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