北米はまだ日本株を買っていない

今月は外国人の日本株を巡る需給のなかで、現金(現物)に焦点をあてて解説する。東証が発表している「投資部門別売買状況」によると、外国人が日本株を2020年11月に1兆4,737億円買い越したのに続き、12月も5,619億円買い越したことが判明した。10月にも4,427億円買い越していることから3カ月連続で日本株を買い越したことになり、日本株上昇の大きな需給要因となったことは確かであろう。

これは、同じく東証が発表している週次の「投資部門別売買状況」をベースに、アベノミクス相場が始まってからの累計の外国人売買状況を示したものであるが、ここまで外国人を日本株買いに大きく傾けたのは、赤枠で囲った4回であり、左から順に、アベノミクス相場が始まり日本株のエクスポージャーを高めた時期、日銀のETF購入年間枠がそれまでの3兆円から6兆円に引き上げられた時期、2019年秋以降の日本株の出遅れが意識されてアンダーウェイトされていたエクスポージャーを戻した時期、そして今回となる。

しかし、今回は過去と比べると為替の需給面で大きな違いがある。これは、米国商品先物取引委員会が毎週金曜日に発表しているその週の火曜日時点での投機筋のドル円ポジションを示したものだが、期間が2005年からとなっている。赤枠で囲った部分はそのポジションが「ドル買い円売り」に傾いた時期であるが、一番左がアベノミクス相場以前の小泉構造改革期待相場で外国人が日本株を大きく買った時期であり、その他の3つは、その上のグラフの外国人が日本株を買った時期と符合する。

このことは、外国人が日本株を購入するということが、ドル(海外通貨)資産を売って円資産を買うということを意味しており、例え日本株が10%上昇しても、為替で10%ドル高(円安)となっていれば利益がでないため、為替をヘッジする動きが出たものと考えることができる。(また、ドル高円安という為替要因と日本株上昇の連関は極めて高い。)

しかし、今回については一向にそのドル買い円売りの兆しがなく、2020年より続いている円買いドル売りのポジションが継続している。

このことは、外国人を地域別に分けた場合、今回の日本株購入が欧州中心で、北米の動きが緩慢であることに起因していると考えている。このグラフは2019年末をゼロとして、東証が発表している月次の「海外投資家地域別株券」から昨年の地域別動向を示したものだが、やはり年末の日本株買いは欧州が牽引したもので、北米、アジアについては大きな動意を示していないことが分かる。

これは、欧州について2015年以降の月別売買状況を累計したものだが、季節性の高さが見て取れる。それは4月、10月にリバランスによって大きく日本株の組入れを増加させているということだが、昨年についてはその4月に欧州が日本株を売り越すという“珍事”が起きている。これはデータの開示されている2010年以降で初めてのことであった。そして、昨年は10月のリバランスも3,219億円と少額の買い越しにとどまった後、手控えていたリバランスの動きが一気に出たと考えている。

これから日経平均が3万円を超えてさらに上昇するかどうかは、欧州だけでなく、現在は自国の株式にそのエクスポージャーを大きく傾けている北米(米国)の資金を振り向けられるかどうかにかかっているのかもしれない。


(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。