新興国市場:反発期待のトルコリラ、回復への道のりは厳しい南アフリカランド

 今年に入って通貨危機に見舞われた新興三国の経済現況は大きく異なるようです。トルコは年初来、自国通貨安(図1 青線)や原油市場の高騰などにより経常赤字の拡大を招きましたが、現在は通貨安を通じた高い輸出競争力/インフレ高進による国内消費の低迷により、経常赤字は急激に改善しつつあるようです。
 行き過ぎた通貨安は、その当初には経常赤字を拡大させますが、時間の経過とともに今度は経常収支を改善させるビルトインスタビライザー(均衡方向へ向かわせる作用)としての機能を持っているようです。

経常収支を見る限り、反転の兆しが見え始めたトルコリラ

 トルコは年初来のトルコリラ安により、懸念材料だった経常収支の赤字幅が縮小傾向にあります(図2)。その背景は、通貨安が高い価格競争力として作用し、その一方でインフレの高進による国内消費の低迷(買い控え)が輸入額を抑えた結果であったようです。
 南アフリカ同様、景気後退期入りも間近と思われるトルコですが、上述のような経常収支の改善傾向は続くことが予想されます。したがって、経済指標の上ではトルコリラの売り材料が少なくなりつつあるのかもしれません。
 ただし、エルドアン大統領自身を含む地政学リスクが、この趨勢を台無しにしてしまうリスクには留意が必要です。

景気回復には困難が伴いそうな南アフリカ

 南アフリカはトルコに比べると景気回復への道のりが険しそうです。景気後退期入りしたばかりの同国経済においては今のところ、自国通貨安が経常収支を悪化させる負の循環にあるようです(図3)。トルコのように自国通貨安が高い輸出競争力として市場に受け入れられ、経常赤字を縮減させる経路に至るには、なお時間が必要なのかもしれません。  
 また、南アフリカはトルコ同様、EUへの経済依存度が高い分(例えば高級ドイツ車の大型部品工場など)、自立反転が難しいとも言えそうです。今後は南アフリカが産出する商品の相場動向(金・ダイヤモンド・石炭など)が南アフリカ経済回復のカギとなるかもしれません。

アルゼンチンは経済指標待ち

 アルゼンチンで本格的に通貨危機が始まったのがこの4月末でした。これを受けて6月初頭にはIMFとの間で500億ドルの融資枠が設定されました。8月には来年度におけるアルゼンチンの対外債務の支払余力に対する不安からアルゼンチンペソは再度急落し、現在、IMFとの間で6月に締結された同国に対する金融支援の見直し作業が進められています。
 アルゼンチンについては経済指標に関するデータが充分ではないため、現状では今後の景況判断がやや困難と言わざるを得ません(図4 直近発表された財政収支は2018年第1四半期)。それだけに、最新の経済指標を待つ必要がありそうです(第2四半期の経常収支は9月27日発表予定)。

(eワラント証券 投資情報室 チーフ・ストラテジスト 塚本 誠)

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