嫌な事実

 米国市場の動揺が一向に収まる気配がない。
 12月4日から20を超える水準で推移してきた“恐怖指数”ことVIXが、12月18日に25.58にまで上昇した。
 これは2月13日以来の高い数値であるが、「2月13日」ということは、当然、米国10年国債の利回りが2日間で0.2%上昇し、3.2%水準となったことが引き金となった10月中旬の急落はおろか、トランプ大統領が、(今にしてみれば第2弾の)対中国向け追加関税の思惑を発表して米国株が急落した3月22日(日経平均は、翌日、4.5%、974円も下落)よりも前ということである。
 これらを凌ぐ“恐怖”を米国市場は感じているということである。

 一方で日本市場(日経平均)は、11月中旬より、欧米市場に比べて、相対的な堅調さが見て取れる。先週末に米国ダウが500ドル近い急落となったことから、月曜日は寄りつき前から緊張が走っていたが、現物に先んじて先物市場が始まるや意外な堅調さを示し、結果的に同日の日経平均は週末比132円程度の上昇で引けた。

 さすがにその夜も米国ダウは500ドルを超える下げ(2日間で1,000ドル超の下げ)となったことから、翌火曜日(12月18日)、日経平均は391円下落して終値が2万1,115円となったが、これは、1週間前の終値である2万1,148円とほぼ同じ水準である。この間、米国ダウが2.85%も下落していることを考えれば、日経平均は、この率を当てはめた570円程度は“相対的に”下げなかったこととなる。

 この堅調さの背景にあるものだが、外国人投資家の株式指数先物(日経平均先物、TOPIX先物)の過去最高水準の売り残高から生じる「買い戻し圧力」という需給要因であると考えている。

 これは、アベノミクス相場開始以降の外国人投資家の日本株現物(現金)の累計買い越し金額を示しているが、その残高のピークは、上海ショックが起きる前の2015年5月であり、緑で囲った今年の動向を見ると、小刻みに売り続けた結果、総額で5.2兆円売り越し、その残高は10.2兆円と、ピーク時から約半減した状態である。

 一方で、これは、外国人の(株式指数)先物について、その残高を辿ったものだが、今年初めの時点で、2.2兆円程度の買い越しであったものが、3月末にかけて売り込まれ、逆に3.7兆円(この間、6兆円も売ったことになる)の売り超となり、それが、“27年ぶりの日経平均高値”と浮かれた10月初旬まで買い戻された後に、一気に過去最大の売り越しである4兆円超の状態にまで再度売られたことが見て取れる。

 4兆円と言えば、日銀の年間のETF購入金額の三分の二にも相当する大きなものであり、それが、10月中旬から一気に出されたことが指数の下落要因となったことは明らかであるが、現在(発表されている直近日付けは12月7日)に至っても、これがまだ4.3兆円も存在しているということは、今しばらく、この買戻し圧力が、欧米に比べた相対的な堅調さにつながってくれるという期待を抱かせる。

 但し、両グラフが示していることは、実は、上述した、上海ショック以降の指数動向は、現物よりも先物の影響を大きく受けているということである。
 実際に、期間を区切って、指数の動きとの決定係数を、現物動向、先物動向について計測すると、後者の説明力が高く、そして、その傾向は特に今年に入ってからより顕著となっている。
 嫌な事実を1つ伝えなくてはならない。
 それは、この「先物の説明力が高いという状況」は、かつても生じたことではあるが、それは決まって、「大相場の終り」に訪れるということである。

(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。