市場は再度ユーフォリア状態に戻っている

 世界的に株式市場は緩やかな上昇過程を辿り、多くの株式指数は今年の騰落率がプラスの状態に戻っている。毎年、ゴールデンウイークの期間、日本が休場の際に他市場が大きく動き、結果的に休場明けの日本市場が大きなボラティリティを示すことが続いて来たが、今年はそれが無かった。

 ゴールデンウイーク期間も含むため、立会い日数として非常に限定的な4月27日から5月7日の期間における、前日比騰落率(終値ベース)を過去30年間について調べてみた。今年は、この期間中、市場が立った全ての日において、この前日比騰落率が、「プラス・マイナス1%内」に収まったのだが、これは実に1989年以来29年ぶりのことであった。つまり、29年ぶりの静かな相場であったと言える。

 因みに、昨年までの28年間において、毎年一番前日比で動いた騰落率をピックアップし、その平均を算出したところ、実に2.5%という大きな数字となった。このことは、ゴールデンウイーク明けに、最低1日は、日経平均が前日比560円程度の騰落となっても、それが“平年並み”であったということである。(過去を見ると、数日間に亘ってこれよりもこの平均値よりも大きな騰落率を記録している年がたくさんある。)

 このように“魔のゴールデンウイーク”を無事に通過し、その後は日米ともに、地政学的リスクのヘッドラインに感応度の低い“ユーフォリア状態”が続いている。日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)を見てみると、4月17日以降先週末まで21営業日連続で17%未満の日々が継続しており、同期間の米国“恐怖指数”ことVIXの平均値も15.09%と非常に低いものとなっている。

 しかし、この間の日経平均とNYダウの上昇率を計測してみると、日経平均が5.01%の上昇を示しているのに対して、米国ダウのそれは0.58%と上昇率が非常に限定的であり、この間、日本市場が大きくアウトパフォームしていたことが分かる。

 この理由として考えられることは2つある。
 1つ目は、先月(4月19日)の寄稿で指摘した、シカゴマーカンタイルIMM市場における、ドルベースの3通貨(円、ユーロ、ポンド)合計でのドル売りポジションの買戻しがこの期間に入ったことにより、結果的にドル円についてもドル高(106.99円→ 110.75円)が進行したということである。グラフをアップデートするが、一番右の赤丸で囲った部分がこの期間の動きである。

 2つ目として考えられることは、裁定取引において、極めて稀な状態である「裁定売り」の残高が大きく存在し、その「解消買い」が市場の下支え要因となっているということである。
 この裁定売り残は、史上初めて3月23日に1兆円を超えて1兆945億円となったが、4月に入り、5週連続で解消買い(現物買戻し、先物手仕舞い売り)が入り、その累計解消金額が4,568億円となっている。これは週次で約900億円以上の現物買いを招いたということである。

 それでは、この2つの要因による、日本市場の対米国市場のアウトパフォーム状態が続くかというと、ここからは逆転することを予想している。

 これは、FACTSET社が算出している全米PERから日経平均のPERを引いたギャップを示しているが、グラフに示しているように、この線が下向きになっている際には、日本の株式市場が米国市場をアウトパフォームし、逆に、上向きの際には米国株式市場が日本市場をアウトパフォームする傾向にある。
 これまでの動きは、緑矢印で示したように下向きであったが、今後は、赤矢印のように上向きとなり、結果的に米国株式市場が日本市場をアウトパフォームすることを予想する。このことは、昨年の「ゴルディロックス相場」と呼ばれたユーフォリアの期間中、この線が上向きで推移していたこと(青矢印)も、その判断材料として挙げられる。

(スプリングキャピタル株式会社 代表取締役社長 チーフ・アナリスト 井上 哲男)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。