市場再編まであと一年

2022年4月4日に実施予定の東証市場再編まであと1年を切りました。昨年2月に発表された市場再編ですが、今年から具体的な再編作業がスタートしています。昨年末には、「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」が東証から公表され、これに対するパブリックコメントの募集が2月26日で締め切られました。また、4月には「フォローアップ会議の提言を踏まえたコーポレートガバナンス・コードの一部改訂に係る上場制度の見直しについて(市場区分の再編に係る第三次制度改正事項)」が公表されています。


上場基準の共通化で

現在の4市場(1部、2部、JASDAQ、マザーズ)を3市場(プライム、スタンダード、グロース)に集約するにあたって、6月30日が移行基準日となり、上場企業に新市場区分の選択に際して必要な手続きや提出書類などが通知される予定です。その後、9月から12月にかけて上場企業による新市場区分の選択申請にかかる手続きが開始され、来年1月中には上場企業が所属する新市場区分の一覧が公表され、4月4日に一斉移行日を迎えることになります。

新市場区分では原則として「新規上場基準」と「上場維持基準」が共通化され(プライム市場は売買代金の基準が異なります)上場企業は上場後も「新規上場基準」の水準を維持しなければならず、市場変更を希望する企業は変更先の「新規上場基準」をクリアする必要があります。新市場はそれぞれ独立したコンセプトで運営されているとの観点から、「上場維持基準」に抵触した場合は現在のような指定替えが行われることはなく、改善期間内に「上場維持基準」を満たせなければ上場廃止になってしまいます。


再編の影響は?

今回の市場再編で最も影響が大きいとされているのが流通株の定義変更とコーポレートガバナンス・コードの適用拡大です。流通株式数とは、①主要株主が所有する株式(10%以上所有)、②役員等(役員以外の特別利害関係者を含む)が所有する株式数、③自己株式数、④国内の普通銀行、保険会社、事業法人等が所有する株式、⑤その他取引所が固定的と認める株式、これら5つの合計を上場株式数から除いたものと定義されています。固定的な株式が多くなれば、それだけ流通株式が減少することになり、再編後の上場基準の維持が難しくなるケースも出てくるでしょう。中小型株だけでなく大型株の中にも流通株式数の少ない企業が含まれる可能性があり、上場基準を満たすために株式分割や新株発行、親子上場解消を行うといった影響が出てくるかもしれません。

また、コーポレートガバナンス・コードの適応拡大については、JASDAQスタンダードでは基本原則のみが適用範囲となっていますが、新市場のスタンダード市場では全ての原則(基本原則・原則・補充原則)が適用されることになります(グロース市場は従来同様基本原則のみ)。また、プライム市場では今後の改定で、より高い内容のガバナンスが適用される見通しです。

コーポレートガバナンス・コードとは、上場企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指して、経営者の的確な意思決定を支える実務的な枠組みで、投資家向けの「スチュワードシップ・コード」と両輪をなす、企業と投資家の対話の基礎となるものです。今回は各原則を「コンプライ・オア・エクスプレイン(「実施するか」それとも「実施しない理由を説明するか」)を選択することが求められます。投資家の評価だけでなく、社会的な信用をも左右する可能性があり、注目しておく必要があるでしょう。


(eワラント証券)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。