恫喝と相場

 トランプさんがついに火を噴いた。12日のウォールストリートジャーナル(WSJ)紙のインタビュー記事で、「ドルは強くなりすぎている」、「低金利政策が好ましい」と述べた。

 これを受けて、マーケットはドル売りの反応となり、ドル円は109円台後半から109円台前半に下落、翌13日の東京市場では、108.72円付近まで水準を引き下げた。世界最大の経済力・政治力を持つ国の大統領が、自国通貨高をけん制した割には、マーケットの反応は鈍い。トランプさんが舐められているのか、マーケットが米国の怖さを知らないのか、その結果は、いずれ時間が教えてくれるだろう。

 米大統領が為替市場を恫喝で思い出されるのが、1993年4月13日、当時、大統領就任間もないクリントン米大統領が、日米首脳会談の際、「貿易不均衡の是正には円高が効果的」と発言したことだ。1980年代から日米は、いわゆる「日米経済摩擦」が勃発、自動車輸出では、1981年から「対米輸出自主規制」をかけるなど、日本政府は、対米貿易黒字の縮小に動いていた。だが、1978 年に はじめて100 億ドル台に達した対米貿易黒字は、87 年には約 600 億ドルに達した。その後、貿易黒字の増加は小康状態になっていたが、いっこうに減少傾向に転じる気配はなかった。

 そんな中、1993年に民主党のクリントン大統領が誕生する。停滞する対日貿易赤字の縮小に業を煮やした同大統領の発言が、前述したものだ。この発言の効果はテキメンだった。当時の資料をみると、同4月12日のドル円は112円台で取引されていたが、同発言を受けて下落を開始し、17日には110円台、21日には109円台、その後、しばらく仕手戦が続いたが、5月下旬には106円台、6月15日には104円台まで下落している。その後、112円まで急反発するが、戻りは叩かれ、8月5日には103円、13日に101円台に突入、16日に100円台に下落し100.40を底値に1日に6円くらい急反発している。

 当時と現在とでは、状況が違うが、ドル円のレートが比較的近いうえ、大統領の就任一年目の4月に、為替について突っ込んだ言動をしたことは、単なる偶然だろうが、妙に気になるところではある。

 また、この時の日米の金利差とドル円の関係をみると、金利差が拡大しながら、ドル円は下落を続けている。このことについては、また後日、詳しく述べたいと思うが、2000年代に米国とユーロ圏が鉄鋼問題で揉めた時もそうであったが、二国間の緊張が高まったケースでは、為替市場は金利差ではなく、リスクプレミアムを織り込みにいく傾向があることがうかがえる。今回のトランプさんの恫喝、あまり舐めてかからない方がよさそうだ。

(エイチスクエア代表取締役社長 佐藤 隆司)

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