悪材料の織り込みと携帯キャリア各社株

「値動きの良い銘柄に資金集中の可能性も」
 7月31日に掲載された前回記事「“物色の変化”が分かりやすく表れている」は多くの方に読んでいただけたようだ。その中で取り上げた石油元売り株の「JXTGホールディングス(5020)」は、その後の全体相場の軟調推移にツレ安となった後もいち早く出直りの動きを見せ、「出光興産(5019)」は継続高となった。ちなみに足元も石油元売り株を取り巻く環境に変化はなく、OPEC減産緩和と地政学的リスクによる強弱感が対立したまま、原油価格は高値推移を継続している。石油元売り株にはフォローとなるものと見ている。何よりも、物色が限定的な相場の中において強い動きをする銘柄は貴重だ。値動きの良い銘柄に資金が集まる傾向があるため、一段高になりやすいものと考えている。「株価の動きは株価から知る」の好例ではないだろうか。引き続き注目していきたい。

「官房長官発言ショック安からの立ち直り」
 「株価の動きは株価から知る」という原則において、気になる動きがあった。8月21日、菅官房長官が札幌市内で行われた講演の中で、日本の携帯電話の利用料金について「事業者間の競争が働いていない。今より料金を4割程度下げる余地がある」と発言したことで、携帯キャリア各社の株価が下落する場面があった。KDDI(9433)は8月21日と8月22日の両日で(8/20終値との比較)約7%、NTTドコモ(9437)は同約4.5%下落。ソフトバンクグループ(9984)は8月21日こそ約1.7%下落したものの、8月22日は安寄り後切り返し、大引けでは反発となった。

KDDI(9433)
NTTドコモ(9437)
ソフトバンクグループ(9984)

 8月23日には野田総務相が、情報通信審議会に、携帯電話市場の競争活性化による料金引き下げを含む、6項目からなる電気通信事業の競争ルールの包括的検証を諮問し、菅義偉官房長官が「4割程度下げる余地がある」と述べた料金引き下げなどの議論がスタートしている。この審議会の中間報告は来年6月に、来最終報告書は来年末にとりまとめられる見通しで、この段階では詳細はわからないものの、携帯キャリア3社の株価は、少なくとも一段安にはなっていない。もちろんその後の全体相場が堅調に推移したことを割り引いて考える必要があるが、これら銘柄に対する失望売りが出ているわけではないようだ。とりわけソフトバンクグループ(9984)においては、高値圏での小動きに終始していると表現してもいいだろう。

 一般的に「これは悪材料だ」と考えられることであっても、株価に目立った影響がなければ、投資家にとっての悪材料とはならず、逆に押し目となる。2-3営業日も経過すれば糸口がつかめるだろう。現在の株式市場において、材料の織り込みは極めて早いからだ。

(株式ジャーナリスト 天海 源一郎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。