新興国市場:アルゼンチンによるIMF追加融資要請が市場に与える影響

<まとめ>

  • 変動相場への移行からまだ3年のアルゼンチンペソは、現在も市場公正価値の見定めが難しい状況にある(図1)。
  • 深刻な経済・財政問題などとあいまって、今後も投機資金の標的となりやすく、アルゼンチンペソ売り圧力継続の可能性は高い。
  • アルゼンチンペソの急落は、特に混迷が続くトルコリラにとって致命的な打撃となる可能性も。
  • 新興国通貨全般への波及効果も懸念される(新興国ファンドの対応など)。
  • 南アフリカ ランドもその例外ではないと思われる。

<アルゼンチンペソ:これまでの概況>
 8月29日、アルゼンチン(図2)はIMF(国際通貨基金)に対して追加支援を要請しました(報道によると、80~150億米ドル相当)。主な使途は急落するアルゼンチンペソ(以下、ペソ)を買い支えるための介入資金です。 
 これを受けて、同日の為替市場ではペソが急落しました。IMFからの金融支援との引き換えに緊縮財政を進めるアルゼンチンですが、2019年に迎える同国の債務返済(自国通貨建・外貨建合わせて約250億米ドル相当)能力に対する懸念が高まったことが要因と考えられます。
 ペソの下落は、例えばトルコリラの下落が加速した8月1日を基準とすると23.3%(対米ドル)、年初来では80%(対米ドル)を超える下落となっています(本稿執筆(8月30日12時)時点)。

 IMFへの金融支援要請及びそれに伴う緊縮財政に対し、著名な米国投資銀行が「早めの対応はアルゼンチンとペソにとってポジティブ」と言及しているように、一部市場関係者の中では好感する向きもあるようです。

 気になるのは、アルゼンチンが6月7日にIMFより取り付けた500億米ドル相当の融資枠についてです。同国はIMFによる融資枠設定直後に介入資金として150億米ドルの借入を行使しています。今回も150億米ドルの借入を行使するとすれば、IMFからの融資枠は残り200億米ドルとなってしまい、今後の波乱要因(特に投機的資金による大量のペソ売り)に耐えうるか、疑問の残るところです。
 今回の急落はやや過剰な反応だと思いますが(上述の2019年債務返済問題は突発的な情報ではない)、2015年に変動相場制へ移行したばかりのペソは、今後も市場公正価値の居所を探す展開が続くものと思われます。

<ペソ再急落が他の市場へ与えるインパクト>

 アルゼンチンはIMFからの融資と引き換えに財政再建策を進め、月次では3.1%のインフレ率(年率換算では30%超)には政策金利を45%として対抗しています。
 IMFの経済危機支援策は厳しい緊縮財政を求める傾向にあり、経済の自由度を奪われることが多いため嫌う国もあるようです。
 例えばトルコは、利上げを嫌うエルドアン大統領に牽制される形で、高インフレの状態が続いています。同国のアルバイラク財務相(エルドアン大統領の娘婿)は「トルコは危機的状況にはない」としていますが、通貨安、インフレの進行、経常収支の赤字、外貨建債務等に対する懸念は依然解消の目処が立っていないように見受けられます。 
 トルコに対してはIMFからであれ、EUからであれ、何らかの救済策が発動されなければ、アルゼンチンよりも状況が悪化する(図3)可能性もあるでしょう。 図4は新興国ファンドの価格推移です(米ドル建・年初来。年初=100)。6月~7月にかけては金利水準が停滞する米国から新興国へ資金が流入、新興国ファンドは値を上げています。ただし8月のトルコリラ暴落を契機に再度反落、直近ではようやく下げに対する半値戻しを果たしたところへ今回のペソ急落が発生しました。
 今回のペソ急落は世界の投資家にとって新興国通貨からの離脱を促す引き金となるかもしれません。新興国への流入資金は基本的に高い利回りを求めるものが多いですが、たった1ヵ月の間にアルゼンチン・トルコと危機が相次いだことで、利回り以上の為替損失発生を恐れた海外投資家による新興国からの資金流出の可能性は高くなったかもしれません。その際は、「新興国」といった枠での判断となることが多いので、特段問題を抱えていない新興国も海外投資家による資金流出の対象となりやすいようです。
 従って、南アフリカ ランドもその影響を受ける可能性があります。
 
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(eワラント証券 投資情報室 チーフ・ストラテジスト 塚本 誠)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。