新興国市場:金融緩和政策にウルトラC、資本市場改革を図る中国の本気度

規制の変更により金融緩和政策を側方支援し、景気刺激を図る方向へ
 中国銀行保険監督管理委員会(CBIRC)は8月21日、国内の銀行が地方政府債へ投資する際のリスク比を現行の20%から0%へ引き下げる決定をしました(リスクなしと認定)。今回の決定により、各銀行は地方政府債(中央政府債よりも利回りは高めに設定)の購入を拡大していくことが見込まれます。 
 地方政府は債券発行によって調達した資金をインフラ整備などへ投入する予定で、この5月以降冷え込みが厳しくなった景気へのカンフル剤として期待されています。中央政府自身は財政負担を避けていることから、実に巧妙な景気刺激策と言えそうです。

地方政府の隠された負債問題は棚上げか?

 地方政府の隠された負債については今回の決定で一旦「フタ」をされてしまうのかもしれません。地方政府に対するリスク比はゼロと中央政府によって認定されたためです。
 ここまで中国は金融緩和路線をひた走る一方で、資本市場改革を急加速させようとしてきました(8月13日「中国:政府一丸となって企業債務一掃へ、相場反発も近いか」)。
 しかし、直近の報道を見ると、資本市場改革に対して本気で取組んでいない印象を受けます(下記の中国高官による発言 8月21日報道)。中国の資本市場改革は中途半端な結果に終わってしまう懸念があります。

指揮官は地方政府が抱える隠された負債の重大性を理解していないかもしれない

 上記で示した懸念の根拠は、今回の資本市場改革プロジェクトに関わる高級官僚の発言が、耳障りの良いキーワードを並べ立てているだけで、具体的な施策提示に至っていない点です。

<担当官僚による中央・地方政府債務に対する理解>(8月21日報道①)

劉昆(リュー・クン)中国財務局部長*発言:

「政府債務の対GDP比は2016年の36.7%から2017年には36.2%に減少しており、リスクは管理されている(Under Control)」
中国財務局部長*:日本の財務大臣に相当

<具体的な施策提示はこれから>(8月21日報道②)

国務院国家発展改革委員会*(NDRC)チェン・ホンワン財務開発局長が示す今後の施策

  • 証券取引所の資産取引メカニズム改善
  • 株主の権利と利益の保護強化
  • 「ゾンビ企業」債務処分制度の改善
  • 健全な企業債務リスクの監視
  • エクイティ ファイナンスの積極的な導入
  • 債務の株式化(デット エクイティ スワップ)の活用

国務院国家発展改革委員会*:国務院は日本の内閣府に相当し、国家発展改革委員会はマクロ経済管理担当:

結論:
 本気で資本市場改革の年内解決(残り3ヵ月余)を図るのであれば、本丸である地方政府の隠された負債のリストラに関する制度設計(①時限立法で対応するのか否か、②不良債権の受け皿機関決定等の枠組策定、③債務の株式化(デット エクイティ スワップ)について恣意性を排除した市場価値算出方法の確定、④債券から転換した株式を上場させるまでのロードマップ(道筋。各段階の定義や期限など)を開示して市場を沈静化させるのが常道と思われますが、これに触れる気配は見受けられません。
 
 8月21日の取引終了時点では中国株や人民元は値を戻していますが、政府がこのあたりの説明責任を果たさない限り、中国の資本市場が透明性を確保するのは厳しそうです。海外資金の流入には困難が伴うかもしれません。

(eワラント証券 投資情報室 チーフ・ストラテジスト 塚本 誠)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。